第二章 ドーム外編
エライ班が、シリマツ官吏、マコト副長とやはり中心的役割を担っている。シンは、ランを副長に指名し、一番相性も良かったリンとヤマイを指名した。彼らはやはり頼もしい仲間であるし、息もぴったりだった。
キョウの15班は、副長にショウを指名し、サテン、ウテン、カンジ等を従えている。しょっちゅう彼らとは顔も合わすので、今までとそう変わり無く一緒に行動したり、情報を交換・共有している。
そして、いよいよドームから野外行動にシフトを移して来た中で、本来の生体武器がここまで大人しく彼ら人間の言う通りになる筈は無かった。彼らは自分達のテリトリーを確実に侵し始めた人間に対して、黙っている筈は勿論無くて、また、ここに来て野猿の群れがひっきりなしに現れ始めた。猿たちが直接人間に危害を加える事は無いものの、獲物を横取りして行ったり、野営の監視小屋を荒らし始めたのである。
所謂・・野猿軍団対野外活動班の第一次戦争である。そう・・これは戦争だ。そのまま野猿に荒らされては、この先の実動が不可能になる。未だ体制などは脆弱なのだから。また、この猿達も周辺動物全てが、遺伝子改良されているのだ。当然野猿の知能も原種とは違い相当高いので、簡単に彼らが人間に屈服する事は無いだろう。
「撃ち殺せ・・それ以外に方法は無い」
生態系を出来るだけ荒らしたく無かったシンの気持ちとは裏腹に、ここで引く訳にはいかない滅亡の一途を辿る人間との闘いであった。その時オオコウモリは、時折襲っては来たが、それ程大きな群れにはならなかった。
駆除と言う言葉が過去にあった。人間のテリトリーに猿が現れたからだ。しかし、その頃の人間は、姿も人間に類しており、自分達に近い猿を敢えて殺さず追い払う事に腐心した。しかし、今は違う。人間のテリトリーは脆弱であり、猿の方が樹上を行動範囲として山切りの木を忌避せず、オオコウモリにたまには襲われても、生息数を確実に伸ばして来たのだ。食するものは雑食・・何でも食うから、いずれ人間に襲い掛かる事も眼に見えていた。しかし、この人間達は違った。全く躊躇しないで排除する方法を選択したのだ。
どん・・どどん・・ばばあーーん・・サイレンサー等を大量製造するゆとりは無かったし、弾の資材は、殆ど鉄とマンガンだった。飛距離は出ない。しかし、猿を倒す事は可能だった。
「撃て!撃て!」
猿は、ぎゃぎゃっと叫び、その辺の木から木へ飛び、更に真っ赤の顔でぎろっと眼を広げ威嚇しながら人間を睨み、それでも圧倒的多数の軍団を形成しているから、その攻撃を受けても、木の後ろに隠れたり、一端は霧散したり、再度小群れで現れたり、なかなか引かなかった。また、引く筈も無いのだ。ここを追い出されれば、オオコウモリや他の動物達と戦争をしなければならない。ここの区域には圧倒的に猪等が多く、野犬も多かったからだ。
撃ち殺した猿を、オオコウモリは空中高く掴み、飛び去って行く。更にオオコウモリは人間すら威嚇し、撃つなら撃って見ろと銃声にも平気で慣れて来た。自分達を襲えば、たちどころに圧倒的な数で蹂躙するぞと言いたげだった。この時点で、完全にオオコウモリの知恵が人間を上回っていた。それを分かりながらも、こっちも知恵の高い猿と闘う人間であった。猿と同時に、鳴りを顰めていた猪や野犬も姿を見せ始める。樹上は、猿が襲う。地上は猪と野犬の群れだ。連射銃はそれこそ現れる全ての動物を射程に入れざるを得ず、一端群れが去ると、オオコウモリがその獲物を掻っ攫って行く。シン達も闘わざるを得なかった。どうにか弾は補充される。しかし、いつ果てるとも分からない状態が続いて行く。人間達の体力も限界を迎えようとしていた時、