第二章 ドーム外編
キョウが笑った。オオコウモリの燻製の肉だと聞いてびっくりしていた彼だが、意外とそれはいけている味なのだ。シン達メンバーの一人ヤマイがその料理については、趣味の分野であろうが、かなり知識を持っていた。つまり、彼らは才能も能力も特筆的に高いが、趣味と言えるかどうか、一つの事に非常に特化した何かも持っているのだった。後々、こう言う本来のカリキュラムでは無い方面の知識・能力が役立って来る事になる・・。
「だな・・キョウも俺と同意見だ」
シンは大きく頷いた。
「で・・キョウ。俺の所にケイジと言う化学班の者が居る。塔の事もかなり調べているが、もう組織には隠し事は無いんだろうな?」
「何?何で俺に聞くの?」
「いや・・あはは。こう言っては何だけどさ、俺達は、ずっとそう言う感じで教育を受けて来たじゃないか。だから、特進路の事だってヤマイから聞いて知ったけど、同じ特命メンバーでも知らされていない事が一杯あった。だから、そう言うのって、つまりは、相手をとことん信用するなと言う教えなんだよなあ・・」
キョウは笑う。
「ははっ・・神野黒服が、もうそんなのを度重なる内部抗争の中で排除した。だからこそ、エライ班が戻って来て報告も出来たし、今思えば短銃を握っていたと言うから、番街黒服を撃ち殺そうと思っていたんだろ?」
「ああ・・後から聞いて、覚悟は良く分かった。一番危ない人だったんだよ、場合によってはさ。だってそうだろ?方向性など、そんなものは、誰も到達していない未知の世界なんだから、そこに答えがある訳じゃない。その段階では番街黒服の考えや資質が駄目だってと言う断定は出来ないんだからさ」
「そう言われて見ればそうなのかも知れないけど・・」
シンは、どっちの考えも間違いだとは思わなかった。それが少なくても派閥と言う自然とそうなる人間故の知恵がもたらす宿命なのかも知れないと思った。絶対服従と言うシステムを仮に作っても、人間は感情や、考えがそもそも同一にはならない。機械じゃないのだから、それは消えるものでは無い。だから争い・・戦争が起きる。欲望が支配する世界なのだ。今はどうだろう・・また思い上がった人間様が、要らぬ道具を持ち、動物達を遊び半分で撃ち殺し、必要以上の殺生をする。食糧になると思えば見境いなく狩りをする、しかし、オオコウモリには余分に食糧を欲しがる事は無いのだ。生きる為に食する・・だからこそ生体バランスが成り立つのである。人間は自分の都合の良い方向に動物達を飼育・繁殖させ、利用し、食糧にもし、この生体バランスを破壊して来たのだ。シンはこの状態が続けば、同じ歴史を繰り返すのでは無いかと言う強い危惧があったのである。
今、誰もシンと同じように今思っている者は居なかった。
「どうした?考え事か、シン」
「あ・・いや。所でさ・・」
シンは、キョウに今後実動班がどう展開して行くのかを話し合っていた。
特に大きな進展は無かった。野営する基地をどんどんと設営し、そこから行動範囲を広げて行く。それに変更は無かった。第2ドームの行方は塔を見つけた事の関連性も調べているが、記述通りならば、第2ドームがこの第一ドームに付帯して有る筈なのだ。