第二章 ドーム外編
少し皮肉めいた口調で、シンは笑った。しかし、確かにそう言う世界では、開発されて来たのは1種では無いだろうと思うのだった。陸より大陸間さえ移動できる鳥類は、尤も有効な生体武器或いは、軍と言うべきか・・もはや、戦争が軍隊同士で行う時代では無かった筈だ。一瞬で全ての国の機能や、システムを破壊できる攻撃能力を競って各国が開発していた時代だったからだ。その為、動物を使うと言う方向性が出て来たのである。
「その情報も、私もつい最近まで・・組織の改編もあったようですから・・」
申し訳なさそうに、カジは言った。
「あ・いやいや、逆に申し訳ない。自分達が本当に何も知らずに、野外活動を命じられていたんだなと改めて感じたからだ。礼を言うよ、とても重要な話だ。カジ君は、そちら方面の事も調べたんだよね。成程、あちこちに飼育小屋を作る。山切りの木なんて丁度格好の飼育場所だね」
「流石ですね、即そんな言葉が出て来るなんて。ええ・・そのつもりです」
「君らにそちら方面は任せたよ。俺達は、やや文明の理機と言うか、危ない人殺しの武器を再び持って、少し有頂天になりかけている。でも、きっとどこかで又なめかけている動物達に反撃を受けるだろう。そう思って進言をしているんだけど、今はどんどん開発すべき流れになってしまっている。又、カジ君、君の話を聞きに来るよ」
こうして、やっとドーム内組織はフルオープンになった。と、同時に岩山の遺品は全て回収されて、現組織内で製造出来そうなものは、構造をコピーし、設計・製造する事になった。それまで殆ど製造なんて作業はAIが管理し、産業・工業ロボットがやっていた。だが、現ドーム内の施設ではそれらを稼働する事は出来ない。或いは出来たとしても、電力を補えるだけの発電設備が無いからだ。たちまちの内にドーム内の電力が停止すれば、ここで人々は生活をする基盤を失うのだ。それだけ逼迫した状況だと改めて認識する必要がある。極めて深刻な状況だったのにも関わらず、組織のトップ同士が遅疑逡巡し、また派閥抗争をやっていたのだった。ここは、組織を率いる強烈な個性を持ったリーダーが仕切らねならない場面なのだ。外の世界をより見て来たシンだからこそ、それが分かる感覚なのである。
シンが第14班の班長となって、カジがそのメンバーの協力スタッフの一人となり、手伝う事になった。そして班の構成も大きくなっていた。第13班~第15班の3班の組織は各方面・・これは或る意味チームと言うより野外軍と言い変えても良いだろう。日々、今は食料となる動物達を補殺したり、成長力の早い大葉を必要だと思われる部分に移植したり、基地を構築したり、ドームから広がる広大な大地を、塔を目指す通路構築手段として、相当の範囲を開拓しているのだ。
その不思議な塔だが、その事を述べる前に、シンは第15班のキョウの所に向った。
今後行動する為に、色々な打ち合わせを各班とやっている。流石にキョウは口が軽いと思われていたが、それは相手に対し距離感を縮め、性情や能力を把握する為に意識的にやっている行為であった。その点、シリマツ官吏は、しっかりとキョウの能力を最初から見切っていたと見え、躊躇なく第15班の班長に指名した。シンも同様に、彼に見切られていた事になるから、人物掌握術や見分ける能力は、シリマツ官吏の方が更に上だと言う事だ。
「いやはや・・あっと言う間に開拓しているなあ・・どんどん野外建造物が増えた。象の道が相当重要だったと言うのは、我々にとって天佑だろうなあ」
「思わぬ事もあるものさ。しかし、我々は現在本当に広大な敷地を手中にしているかどうかと言うのは早計で疑問さ。今は、単に塔まで行き来出来るようになったと言う事と、オオコウモリと実に上手く付き合えているかなと言う現状だ。何時こんなオオコウモリとの協定等は、崩れてもおかしくは無いよ、絶対に相容れない存在だからだ、だって、俺達がオオコウモリを食っている事も奴らは知っているからな、はは」




