塔までの道
エライ班長の凄い言葉に、全員が今度は驚くのであった。
「今更・・組織が何を隠す必要があろうか。我々は、ここまで道をつけた。そろそろ、私が組織に報告に帰ろうと思ってね。君達は、ここに居てくれ」
「エライ班長・・お考えを否定する訳ではありませんが・・」
シンが言おうとする前に、キョウが先に言った。
「うん?何だね?」
「今・・組織とは離れて自由を謳歌し、きままに指令を受けず自発的な実動をし、結果的に第2ドームを目指すと聞いたばかりです。しかし、今のお言葉は真逆であり、何の為に組織に戻り、報告に帰るのですか?」
「ははは・・勿論組織に文句を言ってやるのさ。我々をこんなに危険な眼に遭わせて、使い捨てのようにする組織の幹部にね。そして危機迫る状況の中、黒服の連中が自分達だけの為に、勝手にめいめいが指示を出す。そして、ある幹部は従わない者を皆殺しにでもするつもりか、キョウ君、君にサイレント付き連射銃を渡した事も、問題にしてやるんだよ。内紛の極致じゃないか、それこそ。組織は未だにごたごたとしていて、君を派遣した上の者も、又もう一方の勢力の者も、一端交えて、とことん話をしようと思ってね」
「エライ班長・・」
シリマツ官吏が余りの発言に絶句している。だがエライ班長は、自身が腹を立てていた全ての事を今ぶちまけたのだ。全員の代弁をして。
「あ・・そうだ。シン君とキョウ君が一緒に来てくれ。で、無いと今回私が戻る意味が薄れる。帰るまでシリマツ君、皆の事を頼むよ」
「では・・この塔の探索までで、一端終了と言う事でしょうか?」
シリマツ官吏が聞いた。
「誰がそんな事を言った。ありったけの武具を揃えなければならない。我々が発見した武具もそうだが、やはり我々は武器を持たないといけないと思う。そして、いつまでもこんな愚策としか思えない、野外活動をやっている時間は無いだろう。組織の上の者に、危機感を訴えるんだ。実践をやった我々だからこそ、言えるものがあるんだよ、良いか!我々以外にこの実動を組織し、動かせる者は居ないだろう!そこを自覚せよ!」
「おうっ!」
エライ班長の言葉に、鼓舞され全員が燃えたのだった。そうだ、もう探索の役目は果たした。これからは、実動班の他に優秀な頭脳も総動員させ、とにかくドーム外の活動を加速させようと言う事だ。だから、ここまでの目的はエライ班が果たしたと言う事で戻るのだ。
こうして、絶対秘で有る筈の特進路を、堂々と通りキョウがエライ班長、シンを連れて上司に報告に行くと、上へ下への大騒ぎになった。それはそうだろう、てっきり死んだとばかり思っていたエライ班長以下13名と、脱走したと思われているヤマイも一緒に居ると言うのだから・・上司は番街と言った。そして、その騒ぎの中で、とうとう神野が姿を顕わした。やはり思ったように黒服を着ていた。黒服とは、マントのような大き目の一見怪しそうな魔女風の服装だと思えば分かりやすい。その番街は神野の登場に硬直した。その時点で、遥かに番街より上の者だと言う事が分かる。