塔までの道
「いや・・その時代に、こんな大理石の塔なんて必要なのだろうか。もっと素材的に見て、ドームを構成している特殊材料なんじゃないのか?軽くて硬いもの・・そうだ、エライ班長が、マグネシウム合金と言う金属をその時代に多用していたって言っていたけどさ。それならば、日本にも無尽蔵に調達出来るし、製造出来たらしい」
「成程・・自国で輸入出来なくなった鉱物や資材を賄うか・・それはその時の世界情勢ならそうなるだろうな。そう言う素材で造れば、電磁パルス爆裂にも耐えられるのか」
「まあ・・言い切れはしないがな、現にこうしてドームが存在している実証がある。また、我々のご先祖様は、緻密で非常に優秀な技術を持っていたとは記されている」
「他国では、こんな建物は残っていない可能性もあるってか」
「おい、今そんな事まで考える余裕なんてねえよ」
「雑談だよ」
「こんな時に、こんな所で言うんじゃねえよ」
少し余裕が出来たのか、緊張感がややほぐれたようだ。しかし、見るものと大きく離れては居ないような気がする。ここが安心そうだと感じたからだ。
「何か危ないものの気配は無いようだな、どうする?入って来て貰う?他の皆に」
「もう少し・・進んで見よう。決断が早すぎてもいけない」
ランの判断が過ちだとは思わないが、少し性急過ぎる判断だとシンは思った。周囲は油壺のお陰でかなり明るくなった。確かに階段はそんなに深くは無かった。少し広くなった場所に、3人は降り立った。ここから声を出せば、上の者にも十分聞こえるし、マコト副長も階段の中断まで銃を構えて降りて来た。闇の中で生きて居られるものは殆ど居ない。まして、食べ物すら無い場所では皆無だ。しかし、有毒ガスや硫化水素、酸欠など十分に注意をする部分がある。
「副長・・降りて来ませんか?副長の後に、もう1人中段まで降りて来てくれたら安心です」
「おう・・そうだな、良し、リン君、君が降りて来て・・ただし中段までだよ」
「はい!」
リンも降りたがっていたから、すぐ銃を構えて降りて来る。上で銃声が一発聞こえた。サイレンサー銃でも、地下に音が反射すると結構聞こえるものだ。野犬の違う群れがやって来て、又ボス犬を撃ったようだ。犬は又去って行ったらしい。
「野犬も、色んな群れが居るらしいな、余り第1ドーム近くでは見かけなかったんだがな」
「ああ・・この辺には多そうだ。或いは野犬の棲みかになっているのかも知れないな」
「まあ・・2頭もボス犬を殺したから、しばらく近寄っては来ないだろう。ボス犬が倒されたら、しばらく統率が利かないからな。死体を並べとけば、オオコウモリがまた掃除をしてくれるし、オオコウモリが現れたら、野犬も襲って来なくなる」
「は・・逆に利用してやろうってか・・」
そんな話をしながら、偽山切りの木と同じシチュエーション見たいだなと、4人は言った。何かそんな気配が濃厚だった。塔の上に、らせん状に登る階段がある。しかし、上は暗い。
「油壺が足りないよね・・3時間しか持たないから、余分に作らないと探索が出来ない」