第一章 進の日常
大きな声で返答をしたものの、実際その死に対する恐怖は、殆ど二人には持ち合わせて居なかった。そして、そう言ったエライリーダーさえも、どのように彼らを指揮して行くのかさえ、今の段階では分からなかったのだ。でも、それは仕方が無い、やはり実働部隊の対象が相変わらず、得体の知れない、不可思議な、未知の生物らしきものとしか分かっては居ないからだ。対象が明確に分かれば、対処も出来よう。しかし、実践における検証と調査、情報収集が主な任務になる。だから、今はそれに徹しろと言う事なのかもしれない。二人が、情報の重要さを例え半年であろうとも学んだ事は、無駄では無いと言う事になる。
そして、その特にシンの特性、技能を把握しなければならなかった若山室長は、完全に×点がついた訳だ。組織にその温情は、全く無かった、冷徹に切られるだけである。それはシン達も同じだと言う事になる。ここでは・・この組織では、能力の無いものは淘汰されるのだ。それだけは、はっきりしている。
それから1カ月、2か月が過ぎた。シンとランに命じられたのは、かなりきつい体感訓練であった。体感訓練とは、実際に体にダメージを受けるのではなく、バーチャルによって、本当に受けた衝撃や痛みに対して、脳内に感じる訓練である。これは、精神的なダメージの方がむしろ大きい。何故、今こんな訓練をするのかは、分からない。しかし、これから行うミッションに必要なものなのだろう、エライリーダーは、むしろこの訓練を重視しているようだった。訓練が終われば、どおっと疲れてしばらく見動きが出来なくなる程だった。所謂VRである。それもこの時代からすれば、数百年前のものとなる。
「なあ、シン、この訓練って、今まで色んな経験もしたし、受けて来たが、俺も根を上げた事も無かったんだが、きついよ」
「それは、ラン、俺もさ。俺達には否やを言う資格も拒否も出来ないが、これはきつい」
「何の目的かを聞いたら駄目なんだろうけど、何時までこんな訓練を・・」
「さあ・・俺達に参ったと言わせたいのかな、エライリーダーは」