決別 12名の戦士達
「実際・・1日にどの程度食うのかは分からない。しかし、あの飛翔力や個体を維持するエネルギーたるや凄まじいと思ってさ。それに大蛇と俺達が闘っている事を知っているし、それも倒してから確実に肉を狙いに来た。どこかで常に俺達の動向を監視していると言う事だ。また、食糧のありかもさ。だから鹿網なんて、正にその恰好のターゲットになるじゃ無いか」
「あ・・俺達はその重要な部分を見逃していた?」
「ああ・・大葉が確かにオオコウモリを阻害する効力を発揮しても、大群の前では成す術が無かった。つまり、本気で襲おうと思えば、象だって狙うさ・・でも、象はこうして5頭だけしか今は見ていないが、襲われた様子は無かった」
「大蛇も避けていたな、確かに」
その時エライ班長が、二人の会話に割って入った。
「おいおい・・まず、食欲の話じゃ無かったのか?ヤマイ君」
「あ・・エライ班長・・聞いていたんすね。そうです。食欲が凄いなあと思って」
「それは、凄いと思うな、私も。そしてこの大群を維持するのには、相当数の動物達が比例して生息していなければならない。ましてオオコウモリは、こちらが雨季、かなり移動している筈だが、その残りが襲って来た。それが3万頭と言う数になると、一体どれほど居るのやら」
エライ班長は、そっちの心配かあと思った。しかし、重要な問題だ、それも。ランが質問をする。
「それは、この近辺だけでと言う事でしょうか?」
「あ・・ああ、無論だ。当然そう言う事だろう。オオコウモリの実際の行動範囲がどの程度あるのかは分からないが、敢えて食が満たされるのであれば、遠征する必要もないからね」
「じゃあ・・推定10万頭と言う数と、地域の動物の生息数を割り出せば、その食糧を自給出来ない時は、移動すると言う事になりませんか?」
「おい・・ラン、お前は何を考えている?」
シンがランに突っ込んだ。
「いや、単純な話さ。食糧となる動物数が今の計算で、1頭1.5キロを1日で食するのならば、鹿を主食として、*数100万頭は居ると言う事さ。だってそうなるだろ?猪なんてそう簡単には捕食出来ないし、この種の動物は穴を掘って潜る事も出来るから、そう簡単には捕まえられないと思う。数的には、子も沢山産むから相当増えていて不思議は無いんだけど、意外に少ないなと思ってさ」
「ほう・・ラン君は結構理論的に捉えているね」
*このランの予測が、後に大きな話に繋がって行く。
シリマツ官吏がそう言うと、ランは、
「いや・・そんなの根拠も何も無いっすよ。でも、今回大蛇を倒したと思ったら、一気にそれを獲ろうとオオコウモリがやって来た。そう見ると、案外餌に困っているのかも知れないし」
「ふうむ・・検討の余地がありそうだ。じゃあ、その辺の事ももう少し練って見よう」
エライ班長が、しばらくこの場所に留まる事を提案した。それは大蛇の通り道にどんな動物が通るかを調べる為だった。