決別 12名の戦士達
その声に2人は振り向いた。マコト副長だった。
「済まない・・聞くつもりも無かったが、朝自分も早く起きたのでね。樹上で寝るのは慣れたし、案外網ベッドは快適に近い。蚊なども居ないしね」
「はあ・・」
「今君達が話していた通りさ。実際我々はエライ首班以下、使い捨て同然の実動班だ。むしろ、そうなるべく訓練を受けて来たと言って過言では無い。このように大自然と言うのは、我々の想定を遥かに凌駕し、広大だ。ちっぽけな空間で生きていれば、きっとそこで満足し、一生を終えたであろうと思う。それに・・我々は何故か、父母も知らないし、血縁関係も分からない・・こんな不思議な事があるものかと、疑問に思った時期もあった。昔のDVDや、映画には家族のだんらんであるとか、その繋がりを表現しているものが殆どだからね」
「それは・・自分達も思った事がありました。でも、どうしてもそんな情報は出て来ませんでした」
「考えたらキリが無いんだよ。しかし、今俺達が見ているものが全ての現実。人間と言う生き方がこうであるのならば、私も今実動班でやっている事が全てさ・・」
「はい、そうですね」
シンもラン頷いた。全員が同じなのだ。そこは、何度も確認しとく方が良い。人間は変節の動物だと言われた事がある、教えられた訳では無いが、中には無用な言葉を吐かぬ事が美と言われた時代や生き方もあったようだ。だが、その人間が何をやった?その昔、100年前にも危惧したように日本は原子爆弾を落とされたのだ。無垢の命が数10万人も一瞬で奪われたと言う。戦争の悲惨さを教えるならば、その根幹にはそう言う部分もあると言う事だが、シンはその言葉の意味を十分には理解していない。だが、考えが変わると言う事は有り得るのだ。それぞれに考えがあり、命を今自分達は無視し行動している。だが、中には命が絶対だと思い直す者も居るだろう。それは当然なのだ。状況によって考えが変わったり方法論が変化するのは、当たり前だと言うスタンスを、シン自身は持っていたからだ。
ここで、また組織の話に向う。かなりまた動きがあったようだ。
「本日から、私が指揮を取る事になった。皆さんよろしく」
黒服のいかにも眉がつり上がって、厳しい顔の男が立ちあがると、一斉に拍手が起きた。男が一礼をすると続ける。
「第1陣から既に15回も実動班を組織し、エライ首班率いる実動班が、やっと周囲3キロ円周内の通路及び管理棟を創る働きをした。これは今までどの実動班も出来なかった大きな殊勲だ。しかし、危惧した通り、この組織外には生体武器のオオコウモリが自然界を席巻し、彼らは無数の飛来攻撃によって既に全滅したと思われる。そして、更に知っての通り、14班、15班を組織し第四管理棟より、四方網に向ったが、何の進展も無かった。逃げ帰っただけだ」
その顔は厳しさを増した。その会議上の全員が緊張をする。
一人が手を挙げた。その際に指揮した、前担当者らしい。弁明をするつもりなのだろう。
「敢えて申し上げるが・・第14班、15班は、エライ班長達13班の安否と救出を目的にしたもの、実績を追求するものでは無かった・・」
「甘い!何と言う悠長な事を言われる!彼らがあれ程無数のオオコウモリに攻撃を受けたのは周知の事、勿論彼らが生きていれば救出も出来ようが、目的はそこでは無かったではないか、一刻も早く、第2ドームを見つける事。監視塔のそもそも構築の目的は、そこでは無いか」