決別 12名の戦士達
嫌々ながら返事をするチームの者達だった。とにかく、3日間監視小屋から見ていたが、象の道には他の動物は一切現れなかった。それは、象には近寄らないと言う不文律が出来上がっているのかのように。何かが、きっとそこにある筈だ。それに、動物園から逃げ出したのであれば、象の他に動物も居る筈だが、まだ出会って居なかった。*それもやや不思議な事であろうが、彼らも生まれてからこのかた生の動物に遭遇したのは、野外実動に入ってからであり、牛以外に実際に見た事は無いのだ。授業のカリキュラムの中で、そのコースがあり、食に関する事を学んだ。広大な敷地内で、その時だけは通路の門を通り、そのエリアに入る事が出来たのだ。しかし、ドームが広大だと思っていたが、実際ドームは岩山の数十分の1にも満たないだろう。5万人がどうにか住める居住スペースと、工場、会社と称する各セクトに、通路で隔たれた卵型の建物だと今では分かっている。せいぜい、東西1キロ、南北800メートルのスペースに過ぎないのだ。その中に階層があり、地下もある。又保管庫と言う地下深部と、まだ謎だが、地下通路と言うものもあるらしい?外の世界を経験し続けている彼らには、もはやドーム等は狭く、窮屈な空間なのである。
象の糞はでかかった。それはそうだろう・・体がでかいのだし、食うものも大量だから、出る物もうんと出る・当たり前の事だった。
*象の件は、シンがずっと疑問に思っていて少し後にヤマイと話になるが、明確な答えがその時に出る。
「あれ?臭くねえや」
象の糞を嫌々袋に入れていた彼らが、口々にそう言った。
「やっぱり・・大葉には特別何かがあるんですね・・それに土壌改良剤になっているのかも知れない。オオコウモリの糞とはえらい違いですよ」
ヤマイの言葉に、即ショウが突っ込み・・
「おい、糞は所詮糞だろうがよ・・それに何でオオコウモリの話がここで出るんだよ」
「ふふ・・重要なんだよ、黙々と糞を採取しているエライ班長達3人の顔を見てみろ、ご先祖様が、やせ細った大地をいかに活用するかを、恐らく、戦争道具とは別に開発した理由を見つけようとしているのかも知れないからさ」
「象の糞がか・・俺には分からねえや・・」
ショウは両手を広げた。そして糞を袋に詰めて行く。
こうして象の道を、更に奥に進む事2キロは歩いただろうか、少し横道見たいなものがあった。そこに大葉は余り生えて無く、少し背の低い草木であり、踏み固められた跡のようだ。
「お!ここに獣道があった。猪かな・・」
「猪?やばいじゃないですか!」
「襲われたら、確かに危ないかも知れないな・・。よし、今日はここまでにして、この周辺にまたキャンプを張ろう」
「ええっつ!また監視小屋を造るんすか!」
「ああ・・造る。けど、この前ケン君が蜘蛛の巣貼りと言うロープの結び方を考案してくれたから、作業は簡単になった。皆で手分けをしてやろう、日が暮れる前に」
「はい!」