第一章 進の日常
エライさんが聞くと、二人は同時に声を上げた。そしてすぐ、
「今は、当面2人に対するこれからのミッションを伝達しないといけない。私が、君達のチームのリーダーとなるので、よろしく」
「よろしくお願いします」
屈強なエライさんが、リーダーなら何となく安心感がある。今までシンが所属していたリーダーは、どちらかと言えば、頭でっかちの知能派だった。それが悪いと言うのではないが、チームは、ほぼ全員命を落とす事となった。作戦の失敗か、或いは予想だにしない事が起きたか、それでも自分の行動が思い出せないものの、シンが一人生き延びたのだ。似たような経験は実はランにもあって、全滅では無かったが、半数が大怪我を負い、再び職務に戻る事は無かった。二人が割と強く結びついているのは、そう言う経験があるからだ。実動部隊・・何と聞こえが良いのだろうか、食費も医療費も衣料費さえも免除される。そして、厚遇だ。そして、実際彼らがどんなに危険な事をやっているのかさえも、事務系の者には、理解もされていないのだ。だから、シンがもう現場が嫌だと言えば、間違い無く再び実働部隊に戻って来る事は無かった筈だ。だが、この厚遇は実際捨てがたいものでもあった。そして、ここまでの教育によるものか、先にも言ったように、死に対する恐怖感は、二人とも非常に低かったのである。そこの部分もこれから明らかになって行くだろう。
エライさんは言った。
「ある程度理解出来ているだろうが、君らは壊滅状態のチームからの生還者だ。それに、身体的能力にも長けている。それはここまでのデータでも証明されてもいる。そして、シン君、ラン君も同じく情報が入る部署に、半年間所属もして貰った。結果を今言うが、私たちが期待していた以上のものも認められた。そして、今回のシン君の企画提案であるが、これも若山室長は当然外されたが、検討に値すると上部の許可が下りたのだよ」
「え!そうなんですか!」
「ああ、そうなんだよ。ただし、シン君、ラン君も知っての通り、我々のミッションとは、未開の大地を切り開くようなもの。不可思議なもの、未知なものに対する検証と実践だ。実際私もチームリーダーに指名されたのは、これで二回目だ。以前の失敗を糧にして、少しでもこの現状を把握、今後に生かせるようにやって行きたい。良いか!君達は、命と言うものを殆ど軽視され、死に対する恐怖にも希薄であった。故にミッションでは、命を複数の者が落とす事になったのだ。実戦部隊がここまで積み上げて来て配属されたキャリアは、捨て去るものでは無い、生かすものだと言う事を肝に銘じて欲しい、分かったか!」
「はい!エライリーダーの指示に従います!」