決別 12名の戦士達
「鹿も、そう言えば、案外気にならなかったようだな」
「あ・・そこには視点が行っていなかった。だとすると、象も基本的には草食で、果物等を食う」
「じゃあ、もっともっと昔に開発されたと考えられないか?食害被害に遭っていた頃の話だ」
「いや・・それよりも人間の食の問題じゃないかな。実際これは食べられるし、増殖力も非常に強い、その上に肥料等も殆ど必要が無い。自分で光合成をするからだ、それで足りるんだ。だから、痩せた土地にも育つ」
「じゃあ・・ずっとずっと昔に温暖化が言われていた頃に、開発されたとか?砂漠の対策とか」
「有り得るね・・保水力がとても高い。一度雨が降れば一年は持つだろうと言われているし、根をずっと土中に伸ばすから、地上に伸びている葉を切っても、またどんどん伸びる」
「凄いバイオテクノロジーじゃないか、それならば」
「確か・・そう言う開発で、賞を受けた人の名前が載っていた気がする」
雑談である。誰がどう言う会話をしたのかは分からない。しかし、大葉が非常にこの時代に有効になっている事に、生体武器とは真逆の矛盾を感じた。生体武器は、残り少ない人類の生さえ脅かしていると言うのに。大葉が人類を救う?皮肉なものだと思った。しかし、実際にはそんな事は分からない話だった、だから、雑談なのだ。他にやる事も無いからこんな話をしているのである。
「でもさ、組織が開発したブーツは、結構役立つ」
「跳躍に関しては、硬い大地で平地であればな・・けど、この野外ではバランスがなあ」
「装具も衝撃を吸収する点では悪く無いよ。でも衝撃を受ける時点でアウトだもんなあ」
これは、野外に出る前の訓練で使われた武具、装具についての話だった。それは、彼らが実践において改良する余地に対し、提案出来ると言う意味合いだ。だが、今の所それをやるには、ドームに戻る前提が必要だが、戻らないと言う事なのだから、これも雑談に過ぎない話になる。象が同じ道を行ったり、来たりする中で、やっと、
「象も我々が出会った最初の場所に戻ったようだから、取り敢えず、先の道を進んで見よう。その際、象の糞を回収しとこう」
「ええっ!糞ですかあ・・・」
即反応したのはショウだ。美形の顔と同様に、割と綺麗好きらしい。誰でも排泄物を回収しようなどと言われれば、嫌だと思うのは当然だが、ヤマイは平然と、
「自分が回収しましょう。慣れているから」
「慣れているのか?」
思わず突っ込むが入った。
「当然・・生体が何を食しているかを調べるには、糞が重要。それに、象の糞が何か他の動物の忌避材料になっているのなら、これは有効に使えると言う事さ」
「そうだ・・ヤマイ君が、一番理解が深そうだ。その目的で、めいめいが袋を持ち、入れるんだ、良いな?」
「はあい・・」