決別 12名の戦士達
やるな、やっぱりこいつは持っている・・と、リンは思った。一際異彩を放っているのが、シンなのである。何やかやと言って、首班、官吏、副長が居る中で、話題の中心はシンに自然となっているし、重要な局面では指名されている。この男の奥行きの深さをリンも感じているが、シンも、実は同様に各々のメンバーが高い能力を持っている事を感じていた。能力と言うのは、100パーセント発揮していたら、その者は持たなくなる。人間と言う動物もそうだが、常にそんな力を全て使っていたら、体力も気力も持たなくなるのだ。必要な時に必要な力を発揮出来る者が、出来る奴だと思われるのだ。
「おい、リン・・お前は眼が良かったな、あっちの方角が見えるか?」
「え・・俺の眼が良いって事をお前に言ったか?」
「ふ・・お前の行動を見ていれば、そんな事は分かるさ」
「ははあ・・お前はメンバーの所作全てを記憶しているのか・・まあ、実はそうだ、少しは自信もある。で、どこだ?」
リンは細かい事にはこだわらなかった。
「俺が指差す方向がちょっと遠くて見づらい。山切りの木も、ここからはまばらになっていて、丁度12本先になるが、何か見えるか?」
「12本先?1、2・・・・10本・・12本・・・ああ、あれかあ、結構遠いな、シンも相当良く見えているじゃないかよ。うん、何か細長い白い塔のようなものが見える。山切りの木と比べると、手前の8本目と変わらない所を見ると、結構でかいんじゃないか?」
「そうか!見えるんだな・・褒めてくれたが、俺の眼では12本目もやっとの場所にある。その先にぼんやりとしたものが見えるが、白いとか大きさまでは見えなかったぞ、ははは・・リン」
シンは愉快そうに笑った。
「へ・・シン、お前が色んな分野でかなりの能力を持っている事は、全員がもう分かっているが、俺も眼だけはこれで自慢が出来そうだな・・ふふふ」
リンも少し嬉しそうな顔でシンに言った。
2人がその山切りの木から降りると、シンが帳面と言えば良いのか、遺跡にあった鉛筆と紙に見た詳細図を書き、エライ班長達が創った仮の監視小屋に登った。その時、ゆっくり象達が歩いて来た。
「おう・・象はこの時間に移動するんだな・・我々より結構早いな」
「象の行動パターンを把握する必要がありそうですね。で、ないと我々が敵では無いと言えども、邪魔をすれば排除されましょうから」
そこはヤマイが言う。エライ班長も大きく頷き、
「尤もな意見だ。監視小屋でそれなら数日を過ごさねばな」
「あ・・そう言う事になっちまうんだ」
ランがおどけて言う。
「ふふ・・ラン。お前はそっちの方が嬉しいんじゃねえのかよ」