決別 12名の戦士達
シンがそう言うと、やはり全員が頷くのであった。このメンバーは、誰が副になってもおかしくは無い、それだけの者達だった。
象の道を歩く13名・・象の道はしっかりとしたもので、草も生えていなかった。踏み込まれた土がアスファルトのように硬くなっている。勿論、この時代にアスファルトと言うものは無かったし、電磁パルス爆裂によってそう言う人工ていたのだ。そこから、山切りの木であるとか、大葉等が移植されたのである。ちなみにドーム内は、大理石を敷き詰めた白い道路だった。今ごろ何でそんな情報を出すのかと言えば、ドームの構造自体が石灰岩台地に創られており、修復するのも無尽蔵に資材が供給出来る部分が大きいからであった。しかし、象の道の地下深くがどうなっているのかは分からないし、旧鉱山の坑道があった岩山は、石灰岩地帯では無かった。ただ、その岩山を貫く脈や、こうこうと流れる地下水脈は、石灰岩が浸食された水路で、鉱物に詳しいカンジによると、無数の鍾乳洞がある筈だと言う事だった。その鍾乳洞には、現在恐らく探索するのが不可能に近いと言う。その昔の装備が無ければ、地底湖や狭い場所、酸欠などそんなものを感知出来る道具や、装備が無いからだ。アナログ的な武具や、旧時代の奇跡的な武器を取得し、それを持って、また彼らの知識や知恵を絞りながらこうして進んで行く。象は、すぐ彼らの後に続いて来る様子も無い。定期的にこの象の通路を動物の体内時計に従って行動をしているのだろうと思われた。
大小の木々や色とりどりの花、虫もここでは見える。大地は元来地球が持っていた自然がそのまま100年後の今、復活・再現されているようだった。
そこで、シンは気付いた。
「エライ班長!この辺から山切りの木が規則的に生えておりません!」
「止まれ!」
エライ班長が何かに気付き、チームを停止させた。
シリマツ官吏が言う。
「むう・・ここまでドームから7キロ地点だ・・つまり、山切りの木は、ドームを中心に7キロ範囲内に規則的に植えられている?」
「確かに山切りの木は100M間隔で植えられていたと思う。人工的な植林の意義が恐らくあるのだろうが、我々には勿論そんな事は分からない。だが・・要注意だな。ここから先は象の道が確かに伸びているが、もし側面から襲われると、逃げ場が無くなる」
その通りだった。山切りの木があるお陰で退避出来る場所を確保して来たし、この象の道があるお陰で、他の動物にも襲われなかった。シンマップと呼ばれるシンの記憶力はずば抜けている。エライ班長が、
「規則的では無いものの、山切りの木が無くなった訳では無い。ただ、100Mと言う距離が、かろうじて我々が襲われた場合の逃げ切れると言う想定内で、ここまでやって来た。リン君、今そこに生えている山切りの木に、シン君と一緒に登り、周辺を観察してくれ。我々は、その先の山切りの木に登り、一応ここを拠点にして一応キャンプ小屋を創って見よう。何・・簡単なもので構わないさ。取り敢えず、避難出来る場所にしたい」
「はい!」
11名がすぐその辺の大葉や、ケンの縄を使い、樹上に足場を組み小屋程度のものを創って行く。シンとリンは身体能力に優れる。そしてシンは記憶力が非常に優秀だ。ささっと樹上に登り、周辺を観察した。シンは、見渡す範囲内において、そこから象の道や、山切りの木の生えている距離感や、その配置を頭に叩き込んで行く。そして、余りここまでやらなかったのだが、ノートに書き込んだ。ノートなんて古風な筆記用具は、とっくに消滅していたが、これも旧日本の遺品の中や、宗教儀式で使われた中であったものだ。こうする事で、シンだけがこの周辺のMAPを把握していたのでは、他の者の知恵を拝借出来ない。今までは、ドーム内のPCで打ち込んでいたからこそ伝達出来たが、必要になって来たのである。文字を書くと言う行為は、やはり今までやって来なかった時代だ。リンも興味深そうにその様子を眺めるが、伝達文字は勿論日本語だ。その文字を正確に記憶しているからこそ、シンだけがやれるのである。




