決別 12名の戦士達
「ひょっとして象の居場所が、ドームだったりしてな」
「ん?あはは・・冗談を言うなよ、ショウ」
言ったのはショウ。笑ったのはランだった。情報通の2人が、恐らく真逆の想像をしていたのに違い無い。
「ふふ・・まあ、とにかく象に押しつぶされないようにしないとな、100M四方が山切りの木間が途切れ、綺麗な平野になっている。その先にも象の道があると言う事だし」
「まあ・・あの巨体を維持するんだから、相当の食糧は必要だろうしな。でも、オオコウモリも襲わないんだな、象を、やっぱりさあ」
「それは、そうだろう。倒しても持ち上げられない。オオコウモリも、地上に降りたら王者じゃなくなる。他の猪等も襲うだろうし、野犬も今は遭遇していないが、襲うだろうしな」
「ふ・・お前らは、肝が太いと言うか、初めて野外でこんなでかい動物と遭遇し、近寄ろうって言うんだぞ?襲われたら、一発でアウトだし、象の走力は人間より上だぞ?」
言ったのはヤマイだ。
「え・・そんなに象って早いの・・じゃ・・やばいじゃん」
「だから、最初からやばいんだって・・」
シンが苦笑い。象の道を進むなんて大胆過ぎる作戦こそ、やばい行動なのだ。それも、象は、簡単に襲っては来ないと言う妙な自信をエライ班長が持っているから、それもやばいのだ。もし、この人が狂っているのなら、全員アウトなんだぞ?とシンは思った。オオコウモリよりやばい地上の王者であった。
そして13人は、新たな象が通って来た所を進み、象の道に出た。これぞ王道だなんて誰が言ったのか、洒落にならない緊張感が漂よって来た。
「良し・・止まれ・・有る程度距離を開けておき、象の様子を見よう。今なら何とか逃げられる距離だし、山切りの木2本に縄梯子を頼む、ケン君」
何だ・・やっぱりやばいって認識を持っているんだ、エライ班長は。少しシンも、ほっとした。なら、この人は非常に冷静で、狂ってなんか居ないと分かったのである。
しばらく様子を見た。恐らく象には自分達の存在が認識されている筈である。昨日あれだけ離れていても、シン達の居場所を正確に把握し、興味を持って近づいて来た。そして、象が知能の高い事も知っているし、記憶力も非常に高い。そしてコミュニケーションも取れる哺乳類だと言う事だ。自分達に危害を加えないと分かれば、襲う必要は無いのだ。襲ってくれば返り討ちにするのみなのだから。ライオンだって倒される。百獣の王だなんて言うが、ライオンが肉食獣の中で王者では無い事は、誰でも知っている。象やサイ、水牛にだってやられるし、キリンにだってやられてしまうのだ。そのライオンは、今の所居ないようだ。草原が殆ど無い事から、ライオンが棲める環境では無いのかも知れない。それに、居るとも居ないとも今は分かっていないのだが・・。それに、ライオンが居ても、そんなに怖くは無いなと思った。象の傍の方が余程威圧感もあるし、怖いと思った。それは、彼らが画像でしか、そう言う動物を見た事が無いからかも知れない。