決別 12名の戦士達
夜行性の動物は多い。肉食獣や最も警戒すべきは猪だ。猪がもし出現すれば、サイレンサー銃を使う。それは決めていたし、交代で見張りをする事も決定。これも後から付け足す情報のようだが、数100年前の懐中時計が、未だに動くのである。それも200個以上坑道内にあったのだ。ここでそれを使えるとは思っても見なかったが、時間の観念は非常に重要だった。
そこで一晩を過ごしたが、外敵は現れなかった。鹿の干し肉とオオコウモリの干し肉は、結構野外・・と言っても、ずっと野外なのだが、坑道内で食べるより美味しかった。
「さて・・今日は、中央広場より3キロは進んで来ている時点、ドームから既に6キロは西北西に離れている。シン君、このMAPは大丈夫かな?」
「はい・・ほぼ記憶しております」
「うん・・では、当初ドームから8キロ周囲付近に第2ドームと言っても良いかどうか、そう言う建物があったと言う事で命を受けている訳ではないが、我々が単独にてそれを見つけるミッションを2日目に継続する。諸君、異議の申し立ては今しか無いぞ?」
何故異議を申し立てる必要があるのか、シン達はきょとんとした。
シリマツ官吏が言う。
「説明が必要なら、私が・・」
「いや・・良い。明確に私とて分からないんだよ。では、キャンプをした山切りの木の樹上から、象の道及び、ドームが視界にあるかどうか、まず見よう。この役は・・」
「俺っすね・・やりますよ」
やはりリンが手を挙げた。ケンが簡易網を用意した。この新しくつけられた象の道に、所々柵の代わりに防御壁を設置するのだ。そうする事で、他の動物を一端足止めするのだ。勿論、横の森林から襲われる事はあろうが、象の匂いが思ったより獣避けになっているらしい事が分かった。なので、進行方向に蓋をしとけば当面は安心だと言う判断であった。野戦と言う範疇で考える時、彼らの作戦や行動は、勘だけに頼る愚行では無かった。きちんと想定・議論され、あらゆる選択肢の中で、安全を第一に考えていたのだ。
すぐリンが声をあげる。
「居ました!この象の道より、もう少し左側・・直線で、5本目の山切りの木の向こうに、はっきりとした象の道があって、20本先に広い場所があって、そこに5頭の象が居ます!」
「おう!やっぱり家族かな・・」
象の繁殖力は低い。100年間で、2頭が5頭に増えただけと言う計算なら成り立つ。既に3代目になっている事だろうが、近親と言う弊害もあるので、若い象と思っていたのは、個体的に見ればあれで親だったのかも知れないな・・ヤマイは、やはりシンに小声でそう言った。何故シンにだけヤマイがそう言う情報を漏らすのかは、謎だが、そんな呟きなどエライ班長は、とっくに理解していたようで、
「思った通りだな、4、5頭位だと思っていた。よし、象の道に進もう」
ドームは、視界の中には入らなかったようだ。それに建物がドームであると言う確証は、実は何も無かったのだ。中には、地下室を伴う、地下シェルターもあって不思議は無いと言うのが、ランの情報だった。ショウもそれには同じ事を言っていた。