第25章 勃発
「そこは変わらない。両星は確実に火星、地球の一部の地域に攻撃を仕掛けて来た。味方である筈が無い。ＷＣＩにとってもだ。尤もその両星がＷＣＩの存在なんて知る筈も無いし、Ｍ国の存在も知らないのだろう。ただ、日本の北九州以外の数地点にはレーザー砲を発射し、既に俺達の数基地は破壊された。早々とこちらに拠点を移したのは正解だったと思う。シンの功績だよ」
「そんな功績だの何だのと言うのは、本当に平和な時を迎えての話だ。俺達は、危機回避力で逃げ込んだに過ぎない。ただし・・地下通信路は健在だ。太平洋地下通信路も、数本健在で残っていたし、俺達が次に逃れるとしたら、この通信路さ。そこで、電力需給が可能なように、色んな場所に仕組んであるし、一部の組織は、既にこちらに移っている。北九州地区も無傷だと言う現状もあるしな、瀬戸内海研究所、対馬研究所、国後基地もそのままだ。また中京本部もたまに覗いているし、かなりの機材も残してある。今の生命線は、やっぱり蒸気発電所なんだよ。そこがやられたら、かなりの電力が不足する」
シンは多弁だった。しかし、本当に言わんとする事は、なかなか口に出さなかった。
「ウテン、サテン兄弟の活躍は感謝しているが、この場は幹部会議じゃない。そう言う話をする為に呼んだのか？違うだろ？シン」
マコトが言うと、シンも。
「ええ・・勿論そうだけど、俺達の生命線である組織内部を知る、ＷＣＩが一度も攻撃を仕掛け無かった点、そして、完全に地球及び、月、火星をも攻撃した両星が敵と言う視点で、提案があった訳です」
「提案とは？」
全員がシンの顔を見つめる。
「ええ、ＷＣＩにコンタクトが取れないかと」
「ええっつ！な、何を急に！」
驚くのも無理はない。ずっとＷＣＩこそ、脅威、人類の敵と言い続け、そして見たでは無いか、自分の子飼いであるシリマツ官吏さえ殺し、且つその人肉を食ったでは無いか、そして、宇宙網羅すらしている和良式無線光ケーブル網で、どんな情報さえも収得し、どのような仕掛けを隠し持っているのかも分からぬ相手にコンタクトを取るなどと言う、無謀と言うか虚仮同然の提案があって、それも首班ともあろうものが、自分達に打ち明けるとは。
「無茶苦茶な話に聞こえるし、絶対一番選択肢の無い話を、何で俺達５人会議に？お前の真意はどこにある？」
ランが聞く。シンは、
