第25章 勃発
「そう!そうなんですよ。イオペタスの引力が、月に何等かの影響を与えていると思っております。ただ、月に関しては殆ど地下基地だけですし、潮汐の影響も無いでしょうが」
「ですが・・月とはもともと地球的なコア部分に重金属があるような衛星ではなく、何か殆ど組成的には比重の少ない地殻構造なんですよね。そして、イオペタスも同じですが、これほど引力の影響があるとは思っていなかった点です」
「どう言うプログラムが仕組まれているのかは分かりませんが、それにしてもWCIが何の動きも両星に見せて居ない点が気になります。明らかにまずは地球征服と言う目的で、要塞化を目指したと我々は見ていたのですが」
ケンシンはそれに対して、
「その点については同感に思いますが、実際和良式無線光ケーブル網は、その為の情報収集と、目的は色々あると思います。私は一応用法を発見したのに過ぎませんし、その中で、皮膜素子も発見する事がM国内において出来ました」
「そうっすね、完全無欠と言うものはこの世に存在しないと言う事でしょう。どんな無敵に見える対象であっても、必ずどこかにその反比例が存在する・それが陰陽と言う世界なんでしょうね」
シンが珍しく、そう言う非科学的形容をしたが、それこそ宇宙大原理でもあろう。アマン左佐が、
「地球に影響を与える。つまり、こんな衛星大移動をすら成し得た背景には、やはりWCIに匹敵する科学者が居たと言えませんか?」
「初めての想定だ・・何か、そこに証左が・」
ケンシンが尋ねる。
「今の所、イオペタスはⅠ国の基地では無かったかと言うのが有力な見方です」
「ええ・・はい」
「勿論、我々も非確定な推論はこれまでも無数にやって来ましたし、それを展開するつもりは毛頭無いものの、WCIが躊躇なくI国を攻撃しようとしました。しかし、何故かこのM国の防御機能が発揮され、ここまで相当の小競り合いと言えばおかしいのですが、衝突がありました。またその衝突の中で、双方の攻撃力、守備力が高まっている点もあります」
「ええ・・間近で見て来た私にもそれは強く感じております」
アマンの言葉は非常に適格であり、ずばり本質をついている部分が大きい。左右のシンの傍に常にいる要として、彼等もまたバージョンアップしているかのように感じてしまうのだ。




