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シンカラス  作者: 白木克之
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決別 12名の戦士達

 その素朴な質問は、ヤマイが否定する。


「確かにその可能性はゼロでは無いでしょう。しかし、その時代にはもう書物などは全てデジタルデータ化され、中央の博物館・所蔵館に納められました。しかし、電磁パルス発生によって、互いの通信は皆無。つまり一切の情報や連絡は出来なくなりましたし、電磁パルスは単に電波や電子制御を破壊しただけでは無いんです。構築物や地上にある殆どの人工物を破壊したんです。だから、生活出来る手段も失ったんです、マコト副長」

「そうか・・道具も無かったら、生きていけないよな、そして危ない生体武器がその生物ピラミッドの王者になった・・」

「まあ・・簡単に言えばそうなりますが、現に自分も思うんですが、こうして岩山の坑道内には旧時代の武器も残っていた。地下にはそう言う人工物が奇跡的に残っている可能性はありますね。でも、通常、常識的に考えれば100年も経てばそんな人工物は劣化し、使えないのが普通でしょうし・・原始の時代に戻って何の知識・訓練も受けていない人々が、全てAI管理にて、ロボット主体で社会は動き、食事もそうですが、全部自動で調理されていた。野菜や、動物・魚だって全て養殖だし工場で作られる加工食品ですからね、それはドーム内と一緒なんです。そんな生きる力があったかなあ・と言うのが自分の見解です」


 ヤマイの言う事は頷ける。確かに・・それから幾ら寿命が延びたと言っても、全て管理された社会、医者も居らず栄養も計算され、そのおかげで体力も無い頭でっかちになった人間なんて、非常にひ弱で、体力も無くもろいものだ。簡単に野生生物にやられてしまうだろう。猟をする事だって知らないのだから。既に租々父母の時代に遡っても、そんな事を教えられる筈も無かった、彼らもそう言う時代に生きて来たからだ。全て時代の便利な恩恵を受けて・・可能性は殆ど無いな・・と、聞いていた周囲の者達は思うのだった。マコト副長の素朴な疑問だったが、確かにそうだろうな・・と思う。

 シン達が野外活動出来ているのは、訓練と知識があるからだ。そして、何度も実動を経験しているからであろう。

 もう一つ、ヤマイは言った。


「ドーム自体の素材についても、この際自分の考えを言いますが、各国ともかなり違うと思うんですよ。確かに構造的、資材的な情報社会では、どんなに秘匿していても、そんな設計図なんて簡単に手に入るでしょう。しかし、その素材の精度や、細かい作業をどう各国が行ったかは、それぞれの民族の違いと言うべきか、個性と言うべきなのか、一定では無い。野外の構築物で、本来であれば監視塔からでも現認出来る範囲の構築物は皆無でした。先に言ったように構造物の劣化もあるでしょうが、電磁パルスと言うのは、ある種の破壊電波だと思うんです。そのパルス装置の、又優劣やバラツキはあります。しかし、今の我々が生活していたドームが、今なお健在で機能している事等を考え合わせても、日本と言う国は、世界一の技術力、科学力があったのではと思います」

「ほう・・それは、祖先を誇って良いのかな?」


 シンが苦笑いしながら言う。しかし、強い口調でヤマイは、


「いや!そんな事は絶対に無い!その愚かな電磁パルス発射によって、自分達の文明すら破壊する自殺行為をやって先祖を誇れる筈が無いじゃないか!」

「まあ・・それは同じ意見だよ、ヤマイ」


 シンは言う。


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