第22章 動く、とうとう世界が・・
「うわああ・・うわわわ・・おい・・」
真っ青になる、シン達だった。人間が人間を食う?血で染まったその生肉を、表情を全く変えず、ぱくぱくと和良司令官同位体が食っているのだ。
「う・・げろ・・げろげろ・・」
数人がその光景を見て吐き出した。おそまじいなんてものじゃ無い。白頭のオオコウモリ群が同族食いを確かにやった。しかし、それは凶暴な彼等の共食いと言う捕食現象は他の生物にも見られる。しかし、確かに過去の世界で人が儀式として或いは飢餓状態の中で同族食いをしていた事はあった。だが、シリマツ官吏はその少し前の抱擁に見た、信頼できる部下、自分のパートナーでは無かったのか?
「う・・見ちゃ居られねえ」
ショウの言葉にアマンが言う。
「いいえ・・ここは見ておくべきです。私とてこんなおぞましい光景を見たくなどありませんが、それこそ白頭の時に見たような同族食いは、全て実験途上だった事が明らかだし、ペンギンが蝙蝠にやられて、再生している個体と、同族に食われている個体が居る事も併せて、何故和良司令官同位体がシリマツ官吏分離体を食べるのかでしょう?」
「こんな時に・・何と冷静な・・」
コウタが全く表情を変えずにその光景を見ていたが、アマンの言葉には反応した。
「いいえ・・緊張しっぱなしで、動揺を隠せない私は出来るだけ心が折れないように、自分自身に言い聞かせ、現状を直視しております。その上で、このコピーとも人造人間とも、或いは分離体とも言われるもはや私達が知るシリマツ官吏とは、そのような者でした。それを見分けられない程既に和良司令官は、自己の研究を発展させていたのです。勿論その中に和良クラゲや、白頭オオコウモリ、土竜エイ等の生体があった事も見逃せません」
「そうか・・実は俺もそう思っていた。自分なりに分析もして来たつもりだ」
コウタは厳しい顔で正面を見据えたままでそう言った。とうとう・・シリマツ官吏は中肉中背であり、体重にすると70キロ程度はあると思うが、和良司令官同位体は口の動きを休める事無く、既に半分を食っていた。
「大食漢と言えども、こちらも常人では無いよな。一切れ、二切れの肉を食えば十分だろう?いや、何が十分なのかも分からないが、生肉を・・それも人の肉を・・いや、それでも人では無かったと言われても、人の姿をして、今抱擁した部下である筈の者をさ」
その間にも、空中、地上でペンギンと蝙蝠群の戦いは続いているし、宇宙でも動きがあった。ランは、エイタと共にこっちに集中している。こちらも再生しているようなのだ。




