第21章 脅威の相手
「もしも・・和良司令官同位体が、シリマツ官吏別個体を体内に取り込めば?そうか・・主査、君の策とはここにあるのか」
「え・・」
ダンとキョウが驚いた。
「皆様が驚いた顔をされておりますわ、首班。はい、補佐も了解済みです。策は一つではいけない、つまり怪物をなお欺かんとすれば、その懐に飛び込み、その脳内に同調させる事。それが有効では無いかと、1つより2つ、それこそ無数にこのようなあらゆる想定をさえも、何重にも巡らせた和良司令官だからこそ、こちらも行うべきであろうと。我々には、そこまで何も出来ない事を見切った上で、和良司令官本体は滅してしまったんじゃないですかね。もうその本体はやれる事を全てやった。だが、自らの体は300年と言う長き時を過ごして、もはや耐えきれない程疲弊もしていた。それでもなお完全体にもうすぐ直前と言う段階まで、自らの粘菌研究によって達成されていた訳です。それが今回、自身では無いにしても、これまで行って来た、自身の全てのデータと、現情報すらシリマツ官吏より入手した事によって、生物的AIが始動したのでは無いでしょうか?」
「恐ろしい事を、淡々と言う。しかも正確に分析したよなあ・・まさしく」
シンはこのアマンが、自身が持つ才能を上回る発想を時々する事に気づいていたが、まさにその一言で証明されたようなものだ。彼女は間違いなく軍師だ。コウタもそうだが、彼女のレベルとは違うと思った。
ダンも頷いていた。ここまで組み上げる才能は、やはりシンの傍に居るべきだと思ったし、実際彼女はそう言う立場を任じている。実質上の補佐なのだ、そこへエイジも加われば、鬼に金棒だ。この時代に使用する言葉でも無いだろうが・・。
ペンギンの動向に付随しているかのように、また少し動きがあった。当然慌ただしい緊張感に包まれ、今度は南極で巨大氷河が、陸地を離れ、北上し始めたと言うのだ。温暖化、気候変動の影響で地球の自転軸が傾き、南米付近は極端に寒くなっている。その急速な変化で、南極から溶けだした氷は海水面を上昇させると言ったが、逆に極寒の地が出来る事でそのバランスはかろうじて保っているようだ。なので、本来ならば、シン達が生まれ過ごして来た北九州の旧ドームは水没しなかったのだと言う。
「何か、一度にあちこちで今まで何も無かった方が不思議だと言わんばかりに動き出したなあ」
ダンが言う。




