決別 12名の戦士達
ランが納得した。その上でショウとカンジは、今のドーム組織で、こう言う武具を恐らく製造する事は容易だろう。しかし、肝心の弾丸が出来ないと言うのだ。つまり、資材が無いと言う。火薬が出来ても爆弾は出来る。しかし、弾丸となると大量の鉛とアンチモンなどが必要だと言うのだ。
「じゃあ・・今のドーム内でも資材さえあれば、製造する事は可能なんだな?」
「ああ・・何しろ電気が使える。旧式、老朽化した機械であっても、その程度の事は出来るだろう。100年も鉄を鋳造し、足りないものは工夫しながらでもこうやって動かして来た事は、伊達では無いし、ドーム内では、秘匿された情報は無数にあるが、知識量だけは豊富にあるんだ。足りないのは技術力、実行力、資材だけだ」
「実行力と言うのは、実動すると言う意味か?」
「そうだな・・それに実行力と言うのは、決定するのに複数の者の合意がいると言う事なんじゃ無いのか?絶対的なカリスマ性を持ち、それが誤った考えで、何もかも決定するような強大な力を持った上が居て見ろ、もっと早くに崩壊していただろう?ドーム内の秩序がさ・・とは言っても、複数の者が統治する機構って言うのもおかしいんだが・・」
ショウがすかさずそう言うと、ランは横のカイに、
「おいカイ・・ショウがかなり上の部署に居た事は知っているが、大胆だなあ・・言う事が」
「まあ・・今に分かるさ。俺達は、今は全面にエライ班長、シリマツ管理体制について行く。それは変わらない」
今は・・と言う言葉に、少しランは違和感を持った。しかし、チーム内はそれぞれに密命を受けて結成されたメンバー達だ。全て語り合う事は無いのだから。ランは、それ以上もう考えない事にしたのだった。今は不要な情報を極力入れない事だと思った。眼の前の事をまずやって行くと決めたのだから、全員で・・である。
しばらくして、ようやく運び込んだ武器の仕分けが完了し、全て使用可では勿論無かったが、半数は驚く事に、今も使用可能だと言うのだ。そして、第2坑道への岩山からの侵入は遮断された。唯一出られるのは、第1坑道だけになったが、その第1坑道の岩山付近にはオオコウモリが巣をしている。シン達が行き来していたのは、昼間一斉に捕食活動に出る3時間程で、この習慣を熟知しないと間違い無く奴らは襲って来るだろう。オオコウモリがその気になれば、一斉に凶暴さを増し、狂ったように襲って来る。身にしみてそれを体感しているから、じっくりこれも観察した結果だった。
シンが、武器をいじっているランの所にやって来る。この所結構身体能力の高いリンと一緒の事が多かった。そのリンも勿論一緒である。
「ふ・・相変わらず、えらいご執心だな、ラン。早く使いたくてうずうずしているんだろう?」
「は・・でもさ、勝手に使用しちゃいけないし、無用に食する目的以外に動物を殺してはならないって決めたばっかりじゃん。オオコウモリだって、こっちがアクションを起こさない限り、そうそうは襲っては来ないだろう?」
「ああ・・そうそう襲って来られたらたまったもんじゃないけどさ、気になったのはドーム内で爆弾の製造が進んでいるって言う話だ」
「先にシリマツ官吏から聞いた。凄い進展と言うか、やっぱり慌てているんだなって言う事は伝わって来る」
「爆弾は鉄で良いもんな・・それなら出来るからさ」
「鉄砲玉も鉄弾なら出来るだろうがな・・」
「ふ・・それじゃ射程距離や殺傷力が足りない」
「ははは・・やっぱり人殺しの武具なんだ」