第21章 脅威の相手
「複数だ・・これだけ俺達は世界中を観察して来たわな。それも今の時代に考えられない位の速度と機能を持つMRが360度カメラも搭載し、そして無線LANの恩恵にも与ってだ。ところが、どっこい・・こんな事が起こり得るんだよ」
そう言って、シンはアイコンタクトを取りながら、こそっとリンにデータを渡した。エイタは聞いちゃいけない事だと、視線を合わせなかった。
リンは・・
「これは・・」
眉間に深い皺が寄った。
「おい、エイタ・・お前も見ろ」
「え・・良いんすか?」
「ったり前じゃねえか」
リンは、眉間に皺が寄ったままでエイタに向くと、
「怖いっす・・その顔は・・」
エイタは画面を覗き込むと、息を飲んだ」
「え・・これは・・一体」
シンが、
「由々しき事態となった。少なくても、T国森林は平和であろうと思っていたし、ドーム以外の破壊は無かった。しかし、T国には、大河が2つ流れていた筈だが、今は痕跡が無い。まさか、その河が出現するなんて思いもしなかった。どこから水が来た?俺達が居るM国と1000キロは離れては居るが、山岳からだろう。氷河が溶け始めたんだよ、何の前触れもなく。その大河の一つは、T猿人の住む森付近に流れ始めている。更に、その河には無数の魚らしきものも出現しているんだよ」
「ええっ!何で・・」
「考えられる事は、地下湖だ‥こちらから流出したのだろうと思う。T国森林は、俺達が人為的に大葉を移植し、不毛の大地を改善しようとかなり緑も復活した。しかし、擬ガジュマルの木は塩分を栄養とし、そのミネラル分によってヤドリギの果樹を生む。それが消失すれば、T猿人の生育は阻害されるだろうし、この大河はつまり暴れ川だ。大地に何等かの栄養分は運んでも、既存の大陸だし、ごく一部でしか無い動植物の生息地は失われるだろう。俺達は、もう破壊は見たくない。だが、こんな地変をどうにも出来ない脆弱な人間達なんだよ」
シンが憂い顔。




