第21章 脅威の相手
「色んな・・計算や、思いもあるんだな、そこは良く理解した。が・・敢えてランには隠している何かがある。何が言いたいんだ?と再度聞く。お前には確かにイオペタス破壊の権限が与えられているようだが、そんな簡単な話でも無い。T国のドーム跡がピンポイント破壊されたと言うのがすぐ情報に上がって来たが、これってオープン情報なんだよな・・すげえ違和感を持ったよ」
「鋭いな・・流石に天才エイジだ。もうお前は俺達班長と同格以上だと言う事だが、どんどん持っているものを開示し始めた。つまり、闘いと位置づける以上、戦略だと俺は見ているし、既にここにも敵が存在するぞ、注意喚起しとけやと言うか・・警告の意味でレーザー発射は行っているんだよ、俺もさ」
「そうか・・破壊しないまでも撃ったらこちらも敵がいるぞ、攻撃をするぞと言う警告か・・」
「ああ・・これは、こちらのレーザー砲の正確さも知る為だが、T国ドーム跡にすぐ発射された事を持って、もはや回避できない事態だと首班も判断したんだと思う」
「ランに言われて、俺も更に気合が入ったよ。お前の言う究極生物がとうとう姿を表した。そしてそれは和良司令官母体とは言え、ここまでの情報、記憶を取り込み、更に自分自身の分化すらも可能な相手だと言う事を言いたいんだよな?俺はアマンが、むしろそっちの方に動いているとしか言えないけど、確かに生物で言えば、150度の温度に耐え、無真空状態でも1か月も生き、マイナス150度でも耐え、更に体を切り取られようがどうしようが、脳すらも再生する。又若返りもするし、そもそも寿命すら関係無いと言う事だ。そんな相手を敵に回して、例えばお前がレーザー砲をぶっ放しても、増殖するだけだろうな、戦略で言えば、100パーセント俺達は負ける」
エイジは言い切った。
「そうか・・大体は分かった。今回と言うか、俺達が真なる恐怖に直面している。だけど、何もやれずに俺達だっておめおめと尻尾を巻くもんか・・な?エイジ」
「おうっ!闘る前から尻尾を巻くなら、そのまま自死を選択する!俺は全てやれる事はやる。その覚悟さ」
初めて彼等の、何となくと言うか今回こそは逃げ場の無いものを全員が感じていたようだ。
この時、火星の大地から赤い火が立ち昇った。それこそ、恐らく火星に本来あったT国の基地なのだろう。これもイオペタスからの攻撃だった。そこにはもう基地の存在は無い。しかし、これが設定されていたプログラム通りであるならば、実行に移しただけとなる。もしこの攻撃について、これが人間であれば、何等かの意図が入り、攻撃までの検討するインターバルタイムも入るかも知れない。しかし、ここに人は居ない事は恐らく確実だろうと想定されて来たのだ。AIが、与えられたテーマに沿って130年もの時を超えて、これだけの大きさの天体を宇宙船のように動かし、土星から火星まで移動させて来たのだ。その自転速度、公転速度まで到達するまでには殆どその年月を費やしたが、火星まで移動するのはあっと言う間だった。そしてその勢いのままもの凄いスピードで火星の公転軌道に入り、そこから徐々に自転速度を落とし、公転速度も遅くなった。あっと言う間の出来事だった訳だ。それこそ、そこへもし人類が居たのなら、余りにも急激な圧を受け、生きている事は無かっただろう。肉体はぎゅうぎゅうに押し込まれ、強大なGによって押しつぶされただろう。その辺は既にエイジが分析をしている部分であった。




