第21章 脅威の相手
「言って見ろ、こう言う時に何時も首班は、そう言う発想が大事と聞いてくれた」
「あのさ、例の騒ぎを起こした主犯のアオイだが、変装の名人だったよな。近くで見ても相当のレベルで分からなかった。その仲間のケイジは、自分の素性を隠しとても優秀な奴で、今もリンと同じく連なる別室でイオペタスの監視とバーチャル操作を行っている。ここで思ったんだが、今南極に居るその和良司令官同位体と呼ぶが、その者は現組織の状況と、シリマツ官吏の健在は承知の事だと思う」
「ああ・・だが、現在はほぼ廃人だがな、脳内のAICなんてチップは取り出された。もはや思考力も無いだろう」
キョウが答える。
「A国の基地を攻撃すると言うF国であるとは断定までは出来ていないんだよな?」
「ええ・・確定した訳ではありません。そもそも情報合戦とは相手を欺く所にありますので、幾らそのデータや記録が出て来たとは言え、疑うのが本義です。何故なら全てはAI管理なのですからね、時代は」
「そうっすね、部長の言う通りです。ミッションがイオペタスのAIが実行する前に、南極では旧式の20Dプリンタをどうやって持ち出したのかは知らないが、これは勿論A国製だと思うんだよ、それも当時の最先端の機器だろう」
「まあ・・130年以上前だとそうなるよな、製造はもっと古く150年前製造と言う可能性も高い。大体生体プリンタで130年も培養をするなんて考えられないからさ。ランから聞いたのは、生体プリンタは40Dまで開発されているが、30D以降は全てAI管理で、超高速に勿論仕上がっているらしいと言う事だ。で?どんな脈路でお前は話を繋げるんだ?何時もながらとても回りくどいよな、天才博士さんよ」
ダンが皮肉る。賢過ぎて話が長い、理屈っぽいのだ、コウタは。
「130年もプリントアウトに費やす事は有り得ないから、恐らく複雑な人間組織は、数台をそれぞれ同時に稼働させながら、1年程度で出力出来ると思う。パーツをそれぞれ作るようにな」
「なるほど・・で?そんな脈路は、実はどうでも良い。次の結論を言えよ」
ダンが苦い顔で再度促した。
「つまり・・A国にアオイがシリマツ官吏に扮する存在があり、そこ居ると偽装したらどうかなって話だ。そうなると、和良司令官同位体は彼を守護するべき何等かの行動を起こし、取りあえず、そっちの脅威は一時的にも回避出来ないかと」
「ほう・・それは良いアイデアかもな・・つまりシリマツ官吏は、和良司令官の象徴的培養体であって、つまり、その秘密を俺達に知られては困る筈だ。つまり、守護しようとして、南極に実際どんな道具を持ち込んでいるのかは知らないが、イオペタスにて潜り込ませている生体を使い、阻止するべき行動を起こす可能性が高い、それはCU11からかも知れないし、南極から直接からかも知れないわな。何しろ和良式無線光ケーブル網の何たるかを実際俺達が把握している訳じゃない。一部の機能を応用しているだけだもんな、でも、実際MRなんて言う発想は、彼にも無かった筈。その情報も既にシリマツ官吏から発信されているから、詳細を聞こうとするかも知れない。その回線を利用して」
ダンが大きく頷いた。




