第21章 脅威の相手
「何の為に、こうして口頭での会議を矢継ぎ早にやっていると思う?和良無線光ケーブル網は、情報ダダ洩れになっちまうだろ?事実シリマツ官吏の脳内から、発信されていた事なんて誰も知るまい」
「あ・・」
「だろ?隔離した時に思ったんだ・・もしや、まだ和良司令官側の者や、確かに確実に眼の前で存在は無くなったものの、あの年齢まで生きてきて、その執念たるや恐るべし。まだ何か隠している事は多いんじゃないかと誰もが思っていたわな。だからオフラインにしているし、隔離した時には、和良無線光ケーブル網の遮断方法も分からなかったからな。ここは偶然にだが、国後で磁硫鉄鉱の層があったよな、それを周囲に塗布してあったんだよ。情報遮断をする必要があるんじゃないかと思ってな。だけど、それこそ、そんな方法を駆使していると言う情報をオープンに出来ないじゃないか?今回の情報提示もそうだろ?そう言う先時代と同様な状態で、俺達も過ごしている訳だ。俺がお前達に伝言するリスクもあるって訳だ。小刻みに、こうやって言う時にも相当気を配っているんだぜ?」
「改めて聞くと・・お前の凄さが分かって来た」
コウタが頭を下げた。
「良いか?切迫している状況だけは共有してくれ。はっきりしているのは、南極の和良司令官復元個体は、敵だ。そして今も情報を収集している。俺達も出来るだけの防御もしている。そして、CU11とF国イオペタスは完全に敵だ。だから戦闘を開始するだろう。その戦争の怖さも分かるよな?」
「あ・・ああ・・一瞬で終わりかねないものとなる」
青い顔をして、キョウも答えた。
「そしてA国の基地の位置は、幾ら隠そうともイオペタス内のAIが記憶しているだろうから、このレーザー砲は停止出来ない。この状態は南極の和良司令官同位体も把握しているだろう」
「あ・・あの、ここでこんな質問は場違いなんだが・・何で同位体?和良司令官その者では無いのか?」
コウタらしく恐る恐る聞いたものだ。ここでアマンが答える。
「説明しましょう。しかし、オフラインです。厳重とは言えないまでも和良無線光ケーブル網がこの部屋では遮断されている事を確認はしておりますが、私もまさかの連続で、身震いする程の超天才科学者の存在に正直怖さを感じています。粘菌については、恐らく誰にも知識は無いでしょうし、私も良く分かりません。ただ、単細胞と言うこちらの研究している細胞との共通項はあるようです。その上で、和良司令官の一連の我々人類と名乗って良いのかどうか・・もはや旧人類とは明らかに体組織も変化しているのですが、ご覧ください。そこでご優秀な補佐でしたら、判断された部分をお答えいたします。室長も、そして皆様もどうぞ。この一瞬にも既に前線にてバーチャル戦争に直面している隊員達にも、ご留意は下さいね。我々は各種の場面を常に監視しながら、この問いに対する答えが必要であろうと、お話をするのですから」
「あ・・ああ」
シンとアマン以外はその画面に注視する。リンから連絡が入った。シンとアマンは隣の部屋に。そこにリンが居るのだ。彼らはこの会話の中で、アイコンタクトも多用していた。もしも、もしもの更にその上に有り得ない事を平然とやって来た和良司令官との闘いは、必須だった。身震いする程の緊張感に包まれていた。急展開する事態に、今まで確かに命を落としそうになる事は何度もあったが、切り抜けて来た彼等も、近代戦争が終わってもなお、ここに来て勃発しような状態に。正直どうして良いのかは分からなかったのだ。ケンシンが続いて入室して来た。




