第21章 脅威の相手
「そこに和良司令官は、粘菌を仕込んだ。CU11にな・・」
「どこで・・そんな情報が出て来た」
ダンが聞く。
「全てはメモリーさ・・シリマツ官吏の脳に仕込んであった。一連の会話や、錯乱情報によって小型MIは破壊されたんだよ。あの時さ」
「じゃあ・・やっぱり人造人間であり、そんな脳までを?」
脈路の無い会話が延々と続いていく。しかし、最初から彼等には脈路なんて無いのだ。理路整然と分かっている事なら話せるが、今現在進行中の話題を優先すれば、こうなるのである。
「ああ・・マイクロICチップと言うのは、やはりA国製のようだ。ランがレーザーポイントで見つけた。会話中に脳波も調べていたからな、海馬に埋め込まれていた。まさかそこまで追い詰めるつもりも無かったんだが、余りの激変した情報を一気に叩き込まれたシリマツ官吏の脳は、精神的ストレス障害によって海馬が破損したようだ。尤も、この脳も一度死んだ者の組織培養だからな。本来はとっくに墓に入っていた人なんだろうし。少々の心の痛みは感じるが、シリマツ官吏と言う人造的な人物はここで消えたと言う事にしといてくれ。俺に責められても、これはどうにもならない」
「良いよ、首班を責める者なんて誰も居ない」
「いきなり何時も言うようだけどな、常に俺は最新の情報を披露しているつもりだ。だが、戦略と言うものがもしあるのなら、俺は、過程の事を言わない。これがもし情報合戦の戦争だったとしたらどうなる?俺達は常に敵に丸裸のままで無防備を晒している、人間を信用しきって腹まで仰向けにして見せているる犬のようだろ?例えは悪いが、大昔の言い伝えで、ほら・・手のひらの中で踊っているだけだもんな。信頼と戦争は勿論違うが、犬達は信用しない者に腹なんぞ見せない。それこそ、弱肉強食の世界では命取りになるからだ」
「首班らしく無い物言いだが、分かったよ。で?肝心の話はどうなった」
「粘菌の事と、A国が仕込んでいたCU11が、敵国であるT国の火星基地を破壊する為に130年後、戻って来ようとしているんだよ。そこには和良司令官が更に粘菌も仕込んでいるがな。また、F国がA国と仕掛けたイオペタスの自転速度が上がった事と、公転周期が早くなった事も比例している。こちらはエイタが調べた結果だ。火星軌道上にこれも130年の時を経て移動して来た。見事にマッチングするって言うものだ。その上で、全てにA国とT国の長年に渡る戦争状態が、様々な事態を引き起こしたと見るようになった」
「確証は無かったわな・・だって、誰も一瞬のボタンの経緯を知らないんだから、ただ、和良司令官が月基地のレーザー砲をA国本部に向けた事は分かったが」
「それが130年前の事なら、120年前に起きた電磁パルス爆裂の経緯は、10年もの時間差が生じている事になる」
「おっと・・その話をしていないのに、何故130年と120年の話になった?補佐」
「こちらも・・色々調べたさ。それはここに居る全員だろうがな。本当に矛盾ばっかりだ。俺達は、同時に一瞬の中でそれが起きたとばかり聞いていたし、当然当時を知る者は居ない。一人の例外を除いてな。だが、その者から当時の事が語られる事は一切無かったんだからな」
シンはここまで展開した話だ。頷きながら、




