第一章 進の日常
「成程・・君は、企画情報室がどう言う所か分からずに配置転換をされた。しかし、君が異例の異動によってあの部署に来た事で、他の者に波風を立てたく無かったと言う事かね?」
「そう言うつもりでした。ただ、理解して貰おうとも思っていませんでした」
「くくく・・君は意思が強いのか頑固なのか分からないね」
そう言って笑ったのは、陣辰連帯部長補佐だった。エリートらしく身なりも清潔そうで、黒い縁の眼鏡をかけている。度会部長は、濃い眉毛の体格もがっしりした男で、笑い等は微塵も感じさせなかった。
「まあ、君の思考は分かった。だが、この企画が若山室長に理解されなかったと言うのは、我々の分析でも分かった」
「それは、ボツと言う事ですか」
シンはがっかりしたように肩を落とした。
「誰もそんな事は言っていない。シン君と呼ぶ、これからは、私、豪の所に配属になるだろう」
「え!」
豪保主査とは、又そんな連帯部なんて部署も初めて知ったが、この豪主査は恐らく武芸百般のような微塵も隙の無い所作であり、こちらも薄い唇で、殆ど無表情だが真の通った人物に見えた。
「つまり、君の企画書を読みもしないで、つまらぬ叱責をするような上司なら、不要だと言う事だ。若山君には能力が無いと断定したので、彼には職を降りて貰った」
度会部長がそう言った。