第20章 脅威がついに
「そうっすか・・やはり南極で秘密基地を・・どこまで秘匿しているんすかね、和良司令官は・・シリマツ官吏からはこれ以上聞き出す事は出来ないでしょう。我々がそこを探索出来る筈も無いと思っているようだし」
「宇宙へ行くと言う話と素材的には、地球上であれば今のままで大丈夫でしょうが、同じには行きません。ただし、極寒の地を探索するのは、人では無理でしょうしね。そこはシリマツ官吏の言う通りでしょう」
ケンシンが言う。シンも大きく頷いた。
「今発見しているイオペタスと、南極に蠢く人なるものの一致がある訳です。いずれにしても、バーチャルな形での操作を持って監視する以外に方法は無いっす」
「そうですね・・ラン班長、カムイ副班長等が操作をして下されば、そちらの動きや監視は今の所十分かと・・いや・・十分と言う言葉は軽いですかね」
ケンシンは少し考える仕草をする。
「何か・・?仰りたい事があればどうぞ、忌憚無く」
「ずっと前に・・首班から雑談形式ではありましたが、提案された事があって、勿論その中には宇宙空間での地下通信路素材の活用の事です。どうしても、人類が宇宙空間に行けるようにする為には、完全なる防御システムが必要ですから、絶えず様々な計器類を稼働させ、計測・調整する事が必要です。宇宙線の事も言いましたが、地球上にはまだまだ放射性物質も多く、今も宇宙空間のそれを廃棄しております。いずれどこかの星の引力圏に取り込まれ、その星に落下していくでしょう。放射能を未だに完全に停止するような科学は到達もしておりません。また、宇宙空間で現イオペタスに蠢く『人』なる存在、又人造人間であったとして、極寒の南極にてもあのような薄着で動ける者とは、我々とは全く異なる存在と言えましょう。また、我々はこの数年間、ずっと同胞を探していた。人類絶滅はすぐ眼の前だからです。一方、このような存在を、再び、三度・・和良司令官関与の証左が明らかになるにつれ、もはや彼は、人類が存続出来る未来など考えても居なかったのでは・・と」
アマンが、
「仰る通りの事を私も考えました。ですが、人類が生き延びる最後の手段、研究とは変異細胞・・この研究であった筈なんです」
「そうですね・・私もそう思いました。しかし、我々のこの科学力を放棄させられた、AIと言う人類が自分達の能力以上の神的存在を創った時から、既に人類の瓦解が始まっていました。世界中の科学力とは殆ど全てが軍事力を持たんが為に開発されたもの、そして、その一瞬で消え去る戦争と言う手段は、完全に自分達を滅ぼす事も知っていた。だからこそ、過去時代のテロとかレジスタンス等と言う反政府思想、或いは体制に従わない勢力は総体的思想の中で、消滅しました。監視社会の中では異なる考えなど通用もしませんし、もはやどこに居ようとも、我々の限られた小スペースでさえも、常に監視の眼が光り、身動きすら出来ない環境にありました。AIが破壊されたからこそ、どうにか一部の者達は、過去時代のように反体制側に立つ者が蠢き始めた・・と私は考えるのです」
「それは・・やはりAIを破壊する電磁パルス爆裂とは和良司令官がやったと肯定するものでしょう?それを言われているのですよね」
「主査、貴女の考えは、〇なら〇、×なら×、二者択一の理論です」
「え・・」
アマンは眼を見開いた。




