第20章 脅威がついに
「今更ですかね・・それが重大ものである事は明白です。何故ならば、レーザーポイントとは和良司令官がA国から情報を盗み取ったものですし、相当和良式無線光ケーブルについての被膜処置にも役だった筈ですからね」
「君は・・そうか。組織の中でとんでもなくIQが高い者が居たと聞く。恐らく旧時代ではその数値は250を超えていたとか・・だが、その情報は全く出て来なかった」
「あら・・そんな事まで調べられているとしたら、やはり人造人間について、かなりの踏み込みがあったと見るべきですよね。特に貴方の体組織そのものを見れば、一目瞭然となりますもの」
シリマツ官吏の眼が、異様にこの時光った。ケンシンがそこを見逃す事は無かった。
「おっと・・核心にどうやら触れたようだ。私も敬語は止めよう。少なくても私より遥かに年配だと思う故に慇懃に応対して来たが、和良司令官亡き後も、その意思は残っているようだから」
「何だと・・」
「同じ言葉を二度は繰り返さない。既に南極にまで進出していたとは恐れ入った。この会話は勿論オープンになっている。何も答えが無くても、微妙な声紋であるとか貴方自身の精神的な動揺もキャッチ出来るようになっている。つまり、和良司令官の知能は、アマン主査のIQの事を言われたが、もっと上・・300を下るまい。お分かりだと思うが、私は映像、音声のプロでもあるので、その辺は説明も不要だと存ずる」
「ああ・・知っているとも。この2日に及ぶ会話が、私と言う存在を確かめる為だともね」
「人造人間計画がどの時期に行われたかは知らないが、その地に行ける者はシリマツ官吏・・貴方しか居ない。空白の貴方の十数年間は南極派遣であったんだね?」
「それを私がそうだと言って答えると思うか?」
「だから、答え等求めて居ないんだよ、そして私も本来の姿を一度も見せずに今日まで来た」
「何・・だと?」
アマンも少し驚き顔だった。それならば、数々の発明を行い、多方面に明るく、今回話術に長けたシリマツ官吏とも、同等どころか逆に検事が犯罪者を追い詰める、或いは有能な弁護士がその検事の追及すら完全に論破するようで、完全に詰めの会話を行うケンシン部長こそ、組織の何者であるかをアマンと同じく秘密部署のメンバーである事を告げているのであろう。
「それを公開するつもりも無いさ。実に優秀で、組織の支柱ともなっている首班が居る。私はあくまで支える柱の一人であれば良いと思っている。君に流れている第1世代のガモウ博士は、やはり生体学の権威。この時代の生体学とは非常に重要な研究テーマだったからね。ただ、君にはその血があると同時に、数々の施術をされている。変異細胞は、和良司令官の声帯、体組織・・恐らくかなりの脳細胞をもどこまで培養出来たのかは知らないが、再生されている筈だ。君が和良司令官のコピーと言う言葉や、培養体と言う表現も好まないだろうが、その体が極寒に耐えれるものだと言う事が、その証左となる」
「それは・・訓練によって」




