第20章 脅威がついに
シン達は、現実にイオペタスが火星の公転軌道内に入った事を確認すると、大量のMR機を次々と送り込んで監視を始めた。また南極でのこれも不気味な存在が、緊張を高まらせていた。
「確かに居る・・間違いなく、南極にはかなりの地下基地がある。地球地軸のずれによってその分厚い氷の大部分は溶け出し、勿論今も氷山や厚い氷原はあるものの、茶色く、黒ずんだ岩山等も多く露出している。こうして、幾つもの坑道らしき穴も資源探索をした痕跡なんだろうが、ここも無法地帯だったようだ。多くの衝突があったらしいし」
「人間なんて、分け合おうなんて気持ちは、家族単位や小集団程度になると芽生えるらしいが、大集団、組織になると、競争原理が強く働く。その縄張り意識と言うのは本来動物にあるものだが、人間が少し知能が高いだけで所詮同じ事なんだよ。ただし、動物は必要以上に攻撃をしないし、無慈悲に他の命を奪う事は少ない。全く無いわけじゃないけどさ。遊びでハンターをする動物は居る」
「おいおい・・話している話題の中にそんな雑談のような矛盾話を挟むな。一体、この異常なまた存在が何かってやっている最中だろうかがよ」
「相当数のβMRが送られている。だが、かなりの数が撃墜されたと言う話も聞いている」
「おいおい・・どこからそんな情報を?」
喧々諤々・・かなりひっ迫した様子が分かる。シン達は、火星の衛星となっているイオペタスと連動しているのでは無いかと今思っている所だった。
そんな折に、ランが久しぶりにシンの前に顔を出した。
「おう」「おう・・」
彼等の会話は短い。それで通じているのである。親友だからだ。
「色々試して見た・・流石に参ったぜ」
ラン程の男がそんな言葉を口にする?シンは。
「まあ、やれとは言って無いし、無理も頼んだ覚えも無いがな、昨今の状況は余り良く無い。もし敵対勢力が居れば俺達も安穏とはしておられない。今まで何も無かったんだがな・・いや、有りすぎて困る程の連続でもあったが、俺達と同族を見つける事は出来なかった」
「おう・・今度は確実に居るようだな」
「確かに居る言う証左は今の所無いが?」
シンは反論する。
「その為に俺が直接本部に来たんだ。見て欲しくてさ」
ランの目的が分かると、シンはアマンを呼んだ。アマンの特別研究室内に入る。ここだけは、絶対外部に漏れる事は無い。シンは、重大な内容を含んでいると判断したのだった。
ランは回りくどい言い方はしない。ズバッと自分の調べた結果をシン達に示した。すぐ顔色が変わったのはアマンだった。




