第19章 進むべき方向
「お考えは分かります。しかし、この状況を黙って見ている訳にはいかないじゃないですか。MRが確かに宇宙用に開発されたものでは無いし、耐久度や、色んな器具を備えても居ない事もあろうかと思いますが」
「いえ・・そうではありません。私が宇宙エレベータ方式とリニア方式をMRと言う今の乗り物に開発したと言うか、発案したのは、そもそも地下通信路用になのです。地球上であるならば、ある程度有効に稼働出来るのではと、ずっと研究しておりました。はい、急に思い立って制作した訳では無いのです。映像と共に、私のライフワーク・・つまり私もヲタクな部類の人間ですよ、ふふふ」
「そうですか・・俺達も画期的なこのMR方式と言うか、驚いたものですし、最先端科学を失って、なおこのような乗り物が登場した背景には、そう言った地道なご研究と探究があったのですね」
ダンも敬語で話すのだった。
「いえいえ・・いつも申しますように、応用科学と言う分野には殆ど境界が御座いません。ですが、その中から真に応用出来るものは限られております。そして、現代では、手動と言う限界も御座います。それだけ発達したAI社会では、例えバグや、プログラム上のエラーがあっても、数多くの検証と実証の中から、常に自己修正をしつつ失敗をも学びます。そして、量子コンピュータですから幾つもの選択肢を持ちながらも、有効な方法を採用します。その結果が悪ければ、今、確かに優れた当時すらも恐らく存在しなかったであろう、或いは当時の環境では優れた才能を持ち得ていても、人の能力を軽視した先端科学=AIでは採用もしなかったであろう独自プログラムを構築出来る者も、現在複数人おります。ですが、人間はこれまでもずっと言われて来たように、万能ではありません。間違いを起こします。副首班、その開発と即ち命に関わる事故に危惧する故に、私はご返事出来ませんでした」
「むう・・それ程深いお考えでしたか。ですが・・」
「いえ、私も組織の人間で御座います。ただ、根本的なものが現MRタイプに不足しているので御座います。それは地上におけるMR外膜を超高速回転する事によって、反発光子ですが、それを応用する形にて磁力に例えて、浮き上がっている個体に推力を持たせます。それが地球上の陸・海・空であれば、水・空気等の抵抗によって移動する事が可能ですが、月等へも今も行き来しているものの、人を乗せるのは危険と判断し、バーチャル探索に切り替えております」
「そこは、そうでしたね・・すると構造上のものですか?資材的なものですか?」
「両方です。様々な環境下で全てを可能出来る素材では無いと存じます」
ダンと、ケンシンこの後も時間をずいぶんかけて話し合うのだった。
しかし、観測班は待って等いられなかった。彼等にとって、この事態は危険と感じたからに他ならない。シンは、また重要会議をトップ5で持つ事になった。シンも動けなくなっていたのである。




