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シンカラス  作者: 白木克之
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第18章 激震

「誰も、今ある物を使用するなとか、利用するな、そして破棄せよとも一言も言われておりませんわ。今の言葉の中でそれがありましたか?人類としての文化、そして組織が滅亡したと首班が言われたのです。今現存人類は5万人を少し上回りました。その人類をやっと食の供給を充足出来てはいますが、巨大地球事変後、今の所この地球の状態は安定しているとはいえ、これだけ巨大な地殻の変動があったのです。今時点では地球も安定していると言えど、そのデータを一番ご承知なのはラン班長では御座いませんか?」


 ランの顔色が少し変わった。


「あ・・いや、それは」

「ラン、何で世界列強と言われた当時の5国が宇宙へ進出したのかは、もう我々にも分かった。地球は恐らくアウトな位の大事変が起きると予想されていたんだよな。ただ。日本はその中でも何とか生き延びる策を講じていた。こうなると、とんでも無い事だが不老不死、再生の分野だったんだよな。もう分かっただろ?俺達もその残存サンプルだったんだよ」

「さ・・サンプルって・・」


 ランが絶句する。ダンの言葉が余りにも淡々と言い切ってしまったからだ。


「特にさ・・自分では言い出せないよ・・済みません」


 シンが急に言葉に詰まった。そこで神野元老が・・


「いや・・さもあろう。我々も含めて・・現ドームの生き残り人員全てが、再生細胞・形態記憶鉱物組成が組み込まれているなんて、今になって知った事だよ」

「じゃあ、和良司令官はそれを知っていて?」

「ああ・・知っていたんだろう。だから、そうでは無い本来の生物起源の再生・延命・或いは不老不死・若返り研究をやっていたんだろう。それはT国の5博士も同じ方向性だったのだと思う、第1、第2世代は、言葉は悪いがな、その方向なる実験体であったんだろう。俺はそう考えた」

「と・・なると、やっぱりどこが善悪かの境も無くなる・・」


 マコトが言うと、ほぼ全員が頷いた。


「首班の言われる意味は、例えば神など否定された近過去においては、そんな道徳心であるとか、有りもしない存在をあたかもあるかの如く見なし、人間社会を牛耳っていた組織の実態ですよね。その全てが、法によって縛りリールでは無く最後には強制的に従えさせる。そんないびつな社会が、行き着く先とは自分だけ、自国だけ優位に立とう、多くの物や、彼等にとって位置づける価値観のものを独占しようとする。我々が教えられて来たものも、過去に決められた人間社会にとってのルールも、それは善悪とはむしろ関係のない所にあって、互いに妥協した産物ではありませんか?」

「うわ・・そう言う風に機械的に分析されると、答えようが無いよ」


 マコトは黙り込んだのだった。

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