第18章 激震
「それは・・確かにそうなんだが・・今までの経緯では、何の反応も無かったと言う事だ」
「ふ・・君ともあろう学者が・・良いかい?全ての歴史と言うのは、消滅した瞬間に無くなるものだと。俺達は太古の地球の事も、記録に残っていない不可解も諦めて来た。だが、記憶媒体と言うのが、確かに年代を経れば、集合していた光子も分散し、断片になるんだろうが、その一つ一つは消えないと言う事だ。即ち、俺達がこの時代に辿り着いたものとは、光子=電磁波、記憶媒体と言う事だ。そしてある者は、そのセンサーによって遠くが見えたり、或いは通常眼に見えないものが見え、聞こえたりもする。それを不可思議領域とこれまで考えて来た者達には、理解する事も容易では無いだろう。しかし、そう言う分野を今まで置き去りにして来たんだよ。記憶媒体が消えないと言う事は、再現性もあると言う事になる」
「むう・・そこまで足を踏み入れたら、俺達の学んで来た科学、化学分野なんて何の役にも立たなくなる」
「そこだよな、補佐が最も躊躇しているものはさ・・良いよ、本音が聞けた。さあ、幹部の皆、俺はここで提案したい。パンドラの箱を開けるか、或いは封印するか、それは大きな意味で自分達の更に混乱・滅亡を招くものかも知れない。だが、或る意味、地球上に存在した過去の生物群が蘇る道も残ったのだとしたら、僥倖だと言えなくもない。だが、それこそ全くどんな結果をもたらすのか、賭けのようなものだ。そこで、当然補佐の言う未知数分野に足を踏み入れたんだ、俺達は」
「あの・・良いかな?」
手を挙げたのは、リンだった。
「発議自由な会だ。遠慮なんて要らない」
シンが言うと、
「補佐・・その考え・捨てろ」
「え・・」
コウタの言葉が詰まった。
「俺達はさ、最初っから何もねえんだよ。確かに色んな教育も受け、知識として修習して来た。その中で、基本的な学問と言うのは必要なんだろう。だが、これが俺達が毛嫌いしていた、前時代の全て遺産なんだよ。そこから、維持しようとした組織の考えも俺達には理解出来たし、ドームの外に出る必然性も理解した。そこからは、偶然とまるで奇跡の連続だったじゃないか。俺達って、実際ドームの中で生まれ、その恩恵を受けて一端外に出てどう思った?オオコウモリが飛び回り、野犬、猪、僅かではあるが熊も居る。そんな世界で生き延びて行けると思ったか?お前は。後から野外活動をする事になったが、それも現有の機器類、資材、そんなものの総動員だった。その中から俺達をより遠くに足を向ける事が出来るようになったのも、先祖の遺産じゃないか。未知数分野って・・全てそうだった。そこから、学んだ事とその遺産の中で知恵を出し合いやって来たんだ。俺達は発明が今更出来る訳もない。それは、今後俺達に続く世代がもしあるのならば、その者達に任せるしか無い。今は、とにかく賭けかも知れないよ、それは。でも、全てそうやって俺達が道を拓いて来たんだ。そんな役に立たないものだったら、捨てろと俺は言う。そこから何かを生み出す知恵を持とうと思うんだがな」
リンの言葉は、全員の心をどんと突いていた。




