第18章 激震
「ふと・・これはタナベが言った言葉に、どうにか、接点を見つけたような気がしたんだよ」
ダンが言う。
「副首班、説明を願う」
黒川主査はこの鉱物の方の博士でもあるし、それも相当レベルの高い人である。
「あ・・はい。以前より水素脆性は言われておりました。21世紀にはその主たる原因が特定出来ずにいました。所謂金属加工の段階で水素元素が硬度を要求される金属や、炭素繊維を利用した宇宙エレベータ方式の際にも、炭素と結合し水素脆性を引き起こす為、なかなかその技術が要求されるものですから、色々な工夫もされておりました。しかし、敢えてそこに水素脆性を利用すると言う方法もあります。と、言うのは金属を分解させると言うものです。つまり逆利用し、金属をとにかく水素元素と結合させ分解しようと言う事です」
「ほう・・今までは意味も無いそんな事を思いつこうともしなかったよね。逆にAIは、間違いのない加工法を選択し、その時の合金、或いはメッキにしても、工程時間を綿密に計算し、そんな時代の人間の煩わしい熟練工のような作業を省いたのだ」
「そうですよね、わざわざそんな逆行するような、人の手を借りる、熟練工、伝統芸能、芸術、作曲等の分野も過去の時代には次第に薄れて行きました」
しんみりした顔でダンは答える。
「でも、そこに何かヒントがあった訳だ」
「はい。その分解工程において、ある合金が誕生したのです。はい、それが日本独自のマグネシウム合金の超硬でありながら超延性を持ち、そして電磁パルス爆裂によって殆どの世界中の建物が破壊され、地中においても地下30Mまでは砂粒に破壊されました。しかし、それを耐え切るものだった訳です」
「それは、計算されたものでは無かったと言うんだね、むしろ、偶然性があったと」
「その通りです。過去の歴史を見ると、偶然性と言うものが大きくその後を変化させた事は良くあります。その中の一つでもありますが、これって・・誰が発見したと思われますか?」
「え・・いや、まさか?」
神野元老と黒川主査が眼を剥いた。




