第18章 激震
「お・・ショウ・・そこで止めてくれ」
シンが手を挙げた。ここはシンが全て指示すると全員に告げてある。判断力が一番優れた者が下すべきだろうと、それは全員も賛同していた。
「はい・・」
こう言う時は、部下の立場であるショウは敬語で返事をする。
「これだ・・」
リンが小さく呟いた。『対象』は色が赤黒くなって行き、次第に小刻みに揺れ始めた。リンが目撃した時、この『対象』はまるで瞬間移動をするが如き、左右・上下にその位置を変えたが、この時は、周囲の空気そのものが揺れて陽炎のように見えたのである。
「うお・・何か空間そのものが変異でもするように歪みが見える」
「そうだな・・これは細かい振動波が空中の全てを揺り動かしているようだ。リンが遭遇したのは、狭い晶洞内の空間、なら、それを増幅したように見えても不思議では無い」
「そうだよなあ・・ん?」
その時ダンが注視した方向に、蝙蝠がむくっと起き上がった。
「ああっ!完全に死体となり、冷凍保存されていた蝙蝠が動き始めた」
全員が驚いた。更に、スズメ蜂も飛翔し始めたのだ。
「まさか・・と思う部分もあったが、まさしく、これこそ究極の再生生物・・いや、生物なんかじゃない、『第4の異形体対象』なんだ」
どう表現して良いのかは分からない。しかし、完全に死体は動き始めたのだった。
「止めろ・・ショウ」
シンが手を挙げると、『対象』の動きは止まったが、蝙蝠とスズメ蜂は飛び回っていた。
「リンのホーミー増幅音波を・・」
次にシンが合図をすると、両方の生体は床に落ちた。死んだのでは無い。この対象は、死んでなんか居なかったのだ。そして何度でも復活するのだ。それが、分かったのである。
シン達は、とうとうこの日本・M国のシステムそのものを理解するのだった。しかし、彼等の独自攻撃が、この『対象』を動けなくする事も有効だと確信出来た実験であった。




