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シンカラス  作者: 白木克之
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第18章 激震

 少しシンは涙声で言った。一番その能力を使い発揮して来たのは、この男の存在に他ならない。人類がとっくに失ってしまった科学力をも今は駆使しているのだ、まさか宇宙まで飛び出せるとは思っても見なかった事だった。確かに産業資料館には、小型ロケットはある。22世紀頃まで使用されていた打ち上げ式ロケットは、各国が重力変換機によって、大掛かりな設備を必要とせず、AIの自動操縦によって遥かに簡単に宇宙に行けるようになっていた。それだけの科学力すら手に入れた人類が、それを各国が手を結び、地球連合的、運命共同体のような平和な世界を何故放棄したのか・・シン達は心から残念に思った。

 そんな世界情勢に背を向け、ひたすら地下内部に自分達のシェルターならぬ秘密研究所を創った日本・M国の裏同盟だった。21世紀には数百も存在した国家は、22世紀中頃には国家として既に経済的にも、人口減の影響により存在できなくなり、幾つかの国に吸収されて行った。しかし、その国家も人口減に歯止めは利かず、最終的には、10か国程度の大国が世界を牛耳るようになり、そこから一触即発の再び緊張状態が始まった。それは、確かにその集約国家になる時に、互いの領土吸収と言う争いがあった事は誰でも想像出来るし、最終的にはより高い戦闘力を保持した国が、この星を収めるのだ。そこから宇宙基地に進出する流れも加速し、それぞれの大国は、宇宙のあらゆる衛星、惑星を占拠した。

 シン達が、ここまで学ぶ為にはもう4年以上の歳月が経ていたのである。彼等も、もう30才を迎える年齢になっている。ただ、次世代も少しは誕生したし、延命効果も、若返り効果も和良司令官がヒントを与えてくれた。また、大葉、山切りの木、擬ガジュマルの木、そのヤドリギ、様々な瀬戸内海を中心とする魚介類、奇妙だが変異細胞を利用した対馬海洋研究所付近の動植物群、また九州地区内に生息する、猿、猪、鹿、野犬、象、蛇、兎、熊なども生息数に多寡はあるが、地球上に存在しているし、深海生物も、海藻も今再生中である。何といっても生体武器のオオコウモリは、大きく数は増えないが彼等とは共存出来ている。又T国猿人は、恐らくこの先地球が滅亡しなければ、近将来において現人類のように2足歩行をし、高度な文明を持つだろうと思われる。T国博士の優秀な遺伝子が入るのだから、それはこの先未来をや明るくしている。そしてM国の不明な生物群、ゼニゴケと言う苔類であるが、そこ恐らく注目すべき何かが隠されているだろう。

 最後の擦り合わせだった。彼等はもう分かっていた。もはや地球上に自分達以外に人類は存在しないのだと・・ここまで365日、24時間既に5000機以上のMR、そしてαMR、FMRもあるし、用途によって宇宙へ旅立てる構造の物も試作はされている。だが、彼らが宇宙へ今行けると言う確定要素は低かった。それならアバター操作で十分だと言う考えが主流であり、同時に色んな太陽系内衛星、惑星の探索が出来るからだ。

 ただ、敢えて現在その必要も無いだろうと言うのが全員の総意だった。

 彼らは、地球最後の砦と言うにふさわしいこの『龍の巣』探索に、何としてもここに全て謎が隠されていると思い、全力を挙げて取り組んで来たのだ。

 そして、注目の実物スケール5分の1のコピー対象は、既にデータ化されたランが改良したレーザー光子発光振動機によって、実験が行われた。何と、そこには蝙蝠の死骸と、スズメ蜂の死骸も分厚いカプセルの中に、そのレーザー光子振動機と共に入れられていた。

 だが、彼等が何故?と言う言葉は、一言も発する事は無かった。まるでそこに臨場しているように、ぐるっとカプセル周囲を観察するように立っているのである。勿論実際に立っている訳では無いが・・。

 そして、少し離れた数メートル上部にある分厚い透明の遮蔽版に囲まれた部屋から見下ろすように、シン、ダン、アマンの3人が居た。

 そして、実験は静かに行われた。

 シュ・・何か微音がしたような気がした。その振動波が細かくショウがプログラミングした細かい数値のコマンド上昇に従い、確かにその『対象』は色が変化して来るのが分かった。

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