決別 12名の戦士達
この場所が、この空間の中で特別なものだろうと全員が思った。作りが他と全く違うからだ。他の通路は、恐らくまだ十分に発見出来ていないが、外と繋がる何かの為に利用されたのだろう。何時の時代かは勿論分からないが、それは遠い昔のような気がした。
また、そこでチームは立ち止った。
「お・・これは何かの象徴なのか?」
2対の仏像らしきものが左右にあって、石で作られていた。精巧なもので、今にも動き出しそうで、綺麗に色付けされ表面もきらきらと磨かれていた。ここには、いつ創られたのかは分からぬが、全く腐食や劣化をさせるようなダメージが無かったのだろう。そして地震にも大水にも耐えた。つまり、この通路が水で浸食されていない事がここで証明されたのだ。
「我々は、初めてドーム以外に、文明の跡を垣間見たよ」
エライ班長が静かな口調で言う。特に感慨などは無いようだ。
「さて・・進みましょうか」
シリマツ官吏が言う、ここで眺めるより、全容をまず把握する事だ・・それは勿論だった。全容を見ないと、総合的に判断は出来無い。オオコウモリの脅威にも、又追っ手では無いだろうが、実動班が活動するまでにはまだ猶予もあるだろう。ここを自分達が見つけたのだ。自分達がここを探索する権利があるのだ。又しなければならないような気もした。何かがあると思うからだ。
少し進むと、やはりここの象徴なのだろう、階段上に広い又空間があって、沢山の仏像が並んでいた。ここへ何かの宗教的な施設なのだろうか。ドーム内には宗教と言う概念はもう消えていたし、100年前にも象徴的な部分と学究明的な部分で残っては居たが、その概念自体は殆ど否定されていたのだった。科学はそれだけ進歩していたと言えば、逆説的になるが、その文明科学がこの時代なのである。風前の灯の人類の行く末は、もう待った無しだった。このチームには意地がある。自分達が先駆者になると言う意義だ。今は束縛されず、自由と言う立場で彼らは行動している。
「やはり宗教的な何かと言うか、文明科学に反して、ここで共同生活をしていたと考えられないかな」
「それは有り得る話ですが、この住民は死に絶えたのでしょうか?」
「100年経てばね・・例えば、若い世代が居なかったならば、すぐ死に絶えるだろうし」
「でも、その彼らがここまで仏像やら、建立をしたのですかね?」
「いや、もともと古代遺跡があった。何らかの手段を用いて、ここへ移り住んだと考えれば、辻褄は合う。そう言う一部の者は各地へ分散し、文明に背を向けたと言われている。しかし、地上であの有様を見ても、人類が生き残っている保証の方が少ないだろうな」
色々な意見が出るが、この階段上に仏像が並ぶ地点で、通路は終わっていた。所々の空虚から木漏れ日が漏れる。それにしても雨水も当たらず、よくぞこの状態で残っているものだ。それも何時の時代なのかの検証も出来ないのだ。100年前?もっと前?分からない。
行き止まりになった事で、その仏像が並ぶ装飾具を、この日は良く観察する事にした。中央広場より2.5キロ地点であった。通路は広い、思うより早く戻れるだろう事を計算して、ゆっくりここで観察するのであった。
ランは、その中で、1本の剣があるのを発見した。




