第18章 激震
「その通りだと思う。もう情報合戦と言うか・・祖先のその状態は300年程続いていて、当然防御する、或いは破る。開発は競争になるよな。それが唯一国残る最終戦争の手段なのだとしたら、やはりA国は起死回生を狙っていたんだろうし、崩壊した全体主義、帝国主義、或いはがんじがらめの管理社会は、逆にAIによって、自分達の首を絞められる形になってしまった。だが、自由社会、民主主義と言う社会構造そのものも、とっくに破たんしていたんだ。そこに組織としての機能は存在していなかった。帰結は人類滅亡にひたすら走っていたんだよ。耳にタコが出来る程言うが、馬鹿げた競争原理によってな」
「何度も言って来たよな・・じゃあ、先に仕掛けたA国が真っ先にやられたのは当然と言う事になる」
「恐らく・・そうなんだろうなと思う。じゃあ、次に連鎖電磁波爆裂を引き起こしたのはどこかと言う事になる。俺達は、和良司令官の口から自らやったんだと言う言葉は引き出し、彼も肯定はしたが、それが確実だったと言う証左は無いんだよ。あの脳裏には本音は不明さ、全く引き出せていないと思っているからな、未だに半信半疑なんだ」
「そこ・・重要な気がするんだが・・」
ショウが言うと、
「ですよね、我々もずっとその事は頭にありました。そこで、このM国における研究施設及び実験場とは、必ずしも攻撃を想定したものでは無いと思っております。ただ、逆に思えば、地球滅亡を予測していて巣ごもりしていたとも考えられます。ボタンを押したら最後・・その情報は漏れていたのでは無いかと。それは、A国レーザー砲発射です。木星及び周辺衛星の各国の基地は破壊されました。こちらは電磁パルス爆裂によってです。そう言われておりますので、それを採用して申し上げますが・・」
アマンの言葉には、断定するのは疑問があると言う事だ。だが、それは議論されず、
「じゃあ、発射される瞬間に、既にそうなる事は想定されていた?」
「恐らく、相当の情報は掴んでいた筈だ。それが和良司令官であって、むしろ、積極的に関与したんじゃなく、静観していただけだと思うようになった。ただし、その情報を各国に流したのは和良司令官であると思うのでね。敢えて、すぐ先に起こる現象に対し、そこまで手を下する必要は無かったのでは?そして、警鐘を鳴らしたとしても、今まで無視され続けて来たじゃないか」
「そうか・・色んな事が言われて来たが、各国はその為、防御網を確立しようとしていた、だが、電磁パルス爆裂は予想を遥かに超えたものだったと言う事になる」
ショウが納得したような顔になる。ここでは大変重要な話が、ぽんぽんと飛び出した。その内容も勿論、幹部達にオープンになっている。
「当初、各惑星、宇宙基地まで影響を受けるとは思っても見なかったんだろう。地球は殆どその頃になると海洋汚染、地球的大事変に備えて、各国は宇宙へと避難していたんだからね。そして、レーザー砲を撃つと反撃があるぞと言う警告も、勿論A国にしていた筈だ。互いに動かぬ、いや・・動けぬ状態となるのが近代戦争形態であり、それが抑止力となっていたんだ。そして、核は廃棄したかに見えても、全て廃棄されていた訳じゃない。今もMRが宇宙空間に廃棄しているんだからさ」
「どのみち、アウトじゃん・・それって」
「ああ・・これが地球生命体の最高頭脳を有した人類の末路なんだよ。そして穴に潜った日本とM国、そして強靭なドーム建立でどうにか破壊を免れた俺達が、かろうじて生き残っているんだ・・俺は、もはや地球人類は俺達以外に存在しないと思っている」
「何・・じゃあ、希望は・・」
「無い・・同胞を探そうと言うプロジェクトは、もはや消滅したのでは無いかと思う所において、やっと本題になったなあ、ショウ。疲れたぞ・・ここまで喋るとよ、ははは」
シンが苦笑する。




