決別 12名の戦士達
「お・・やっぱり雨季だな、外が見えるが雨の音だな、これは」
「その割に・・雨が浸透し、こっちには入って来ないようだな」
シンの言葉に反応したのは、カイだった。
「うん・・つまり、どこかに雨の水は流れていると言う事になる。この通路には入らない・・例えば、屋根のようになっているとかな、穴の所が」
「成程な・・ここは、もし可能なら外に出られるかも知れないな」
それぞれが思う事は違う。考えている事は、またそれぞれが相談するだろう。そこからまた進むと左の通路は右に又曲がっていた。そしてそれは緩くそのままで歩くと、何とエライ班長達の声がしたのだ。不思議な道だ・・つまり、2手に分かれて、結局道は半円級で一つになったのであった。どんな意味があるのだろう。延長が約3キロあり、やはりこの日は中央広場で、この日の探索を終え、総括をするのであった。
「ふむ・・シン君達の左手には、30センチ程の穴があったんだね。右には殆ど何も無かったが、岩の割れ目らしい箇所が幾つかあって、そこから木漏れ日が射して来て割と明るかった。道は、今まで通り、起伏も無く殆ど平坦だ。不思議な空間だなあ・・」
シリマツ官吏が言うと、全員も首を傾げている。何の為にこの地下空間がある?それも相当古い年代の遺跡だと思えるのだが・・全部を探索した訳では無いから、とてもこの空間は規模が大きく、道程だけでも遥かにドームを超えていると思われた。それが、存在しているのだ。何の崩落も無く・・しっかりとした岩盤で、空気もあるし・・
次の日も3本目、翌々日も4本目・・それぞれが2キロ~3キロ程あって、曲がったり、又蛇行しながらも最後はどこかで行き止まりとなった。やはり殆ど変りはない形状だったのである。
そして6本目の道になった。ん・・入った途端に様相が違う事に気付いた。
「ここ・・今までと少し違うな。道も途中からかなり広いし・・」
確かに相当広かった。天井も高く4M以上はあるだろう、そして道幅も入って100M程は今までと殆ど変らなかったのだが、そこから3M程と広くなっており、灯りも今までより相当明るかった。
また、道の途中3Mの高さには、壁に何か人工物が飾ってあって、身軽なリンが、その一つを手にして降りて来た。
「壺だ・・装飾を施している・・」
「やっぱり遺跡ですかね」
その可能性が非常に高くなった。相当な規模の地下空間だと言うのは分かっているが、ドームから真西に300M、それから真っ直ぐに5キロ以上進んだ場所に中央広場があって、その規模的なものは分からぬが、今の所その中央広場を中心に眺めて、東西2キロ以上の通路が伸びているらしいのだ。一番短かったのが、最初の300M以外は殆どその位曲がっているが、直線で2キロ以上はあるようだ。
道を進んだ。装飾らしい壺は元に戻した。興味も無いし、なるべくそのままにしとこうと言う考えであった。それに、彼らが育って来た環境の中で、そう言う興味すら湧かなかったと言うのが本当だろう。もう少し前の時代なら、骨董の分野で相当の金額をつけたかも知れない。ここで、付け加えておくが、彼らの給料と言うのは実際無かった。金銭感覚と言うのも皆無だ。働く事によって給料のようなポイントが与えられ、そのカードで好きな物を手に入れる事が出来る。それに好きなものと言っても前時代のような物が溢れている訳では無かった。その旧時代に製造された自分達に入手可能である物だけだ。そしてキーをポイントで入手すれば、データがダウンロード出来、自分のPC内で閲覧出来る。そんな限られた品物を眺めているだけなのだから。知識はその点、本を買うのと同じくデータさえ見ていれば、ある程度の吸収は出来るだ・・。




