第17章 接近する
「ケイジは今俺の配下だからな、当然俺がそっちの計測には関わって来た。今では専門分野と言うより、このＭ国に関しては、調査すべき、分析すべき事が満載だ。それにどんな分野を今やっているかもランが開発したサーバと、ショウが進化させている学習型のＡＩじゃないがな、特化型の分析機能のついた整然とデータを集積・管理するソフトが非常に有効に活用されている。つまり・・この連動波形と言うのは、お前達も会話の中でやりとりしていたように、或る種の共鳴さ。もっと言えば、光子も共鳴によって無限の連動をしているんだろうが」
「ま・・あ・・そうなるかな」
リンが反応した。
「その、省くが、連動する振動と言うのが全ての大本だと思う。レーザー光もそう、和良無線光ケーブルもそう。そして、鉱物組成における振動・共鳴によってコントロール下に出来始めたのが、奇しくも世紀末と言うんだろうな、電磁パルス爆裂直前だったと言う事だ」
「言い切ったな・・室長」
「ああ・・その証左が、細胞変異にも繋がって来るが、そこまでは間に合わなかったんだろう。だから、Ｍ国は生産を必要としない無限連鎖方式による、鉱物組成に舵を切った。変異は自在、そして再現性がある。つまり、どんなに破壊されようが元に戻ると言う事だ。これぞ、究極の防御網だろう」
「あ・・」
アマンが口を抑えた。思う部分があったのだろう。
「主査がどうやらお分かりのようだ。イリジウム層の事を言われていたが、まさに日本・Ｍ国裏同盟においても、それが重要な鉱物資源だった。と言うより、宇宙進出目的は、この鉱物資源の独占と開発にあった。人口減対策も当然そこにある。だが、これが人体に組み込まれれば、和良式生体形状記憶と言うのかな、再生細胞よりも、ほぼ永久とまでは言わないが、不老不死を得られる。生体のつまり鉱物化だ」
「それが、ほぼ完成していたのが、このＭ国だと言うのね？」
「待って・・今は、その結論じゃない」
シンがやっと会話を遮った。
「黙って聞いては居たよ、皆の話は一気に進んだ論となっている。もう少しここへ補佐が参加しない現状では、そう結論ばかりを先行していたのでは、今最前線に立つ隊長や、それを補足し、防御網に全力を上げている部長やその他のメンバー達の役割を、もっと考えて欲しい」
「あ・・」
全員が謎解きを楽しむかのように、一気に自分達が調査した事が、現実化した事に少し浮かれていた感があった。だが、本質はそこでは無い。現実に臨場するマコトがそこに居る。今も緊張した場面に何ら変化が無いと言う事だ。その言葉が自分達以外の者達が神経を集中し、マコトの補佐に回っている事に詫びたのである。シンの言葉が現実に引き戻したのだ。そんな謎解き必要だが、今はそれより、現実をどうすべきかとシンは問うたのだ。
そこへやっとコウタが姿を表した。
