第17章 接近する
「俺が見ている所だが、今隊長の前面・後面において5重の遮蔽版を設置しているが、高周波の振動が観測されている。リン・・お前が受けたのは、超音波とは又別種の音源だと思っている」
「そうか・・何か耳目の奥で、これはやばいなと感じて、耳を閉じていた。しかし、それでも脳内を揺さぶるような振動を感じたんだよな」
やっとここで、リンが受けた衝撃波とも言うべきものがベールを脱ごうとしていた。
「そうか・・その手の振動波か・・」
ダンも納得したように頷いた。メイ博士は既に日本に戻っている。代わりにアマンがずっとシンの横に居るし、単独でマコトを前線に派遣しているのでは無い事も分かるし、首班、副首班がタッグを組んで張り付いているのだ。そんな側面支援等はあって当然と考えるのが自然だ。
「振動を発しているその音源と言うか、奇妙な人型のようだな・・ロボットみたいな・・」
「おいおい・・それ、まさしく少し前に話をしていた、鉱物増帯連晶・・つまり、変異鉱物組成って対象になるんじゃ・・」
「そこまでは言っていない。リン・・お前は話をすっ飛ばすなよ、ランのように」
「おいっ!」
カンジの言葉に、ランが突っ込んだ。だが、シンもダンも無言だった。まるで肯定しているかのようだ。アマンも全く発言はしていなかった。それは、ランがその対象をターゲットに、新しくケンシンと合同で開発したレーザー分析機が目まぐるしい勢いで解析しているからだった。
「お前達・・そう言う分析を今やっている最中だし、隊長の周辺の様子にも眼を配れ。主査はずっとやっているんだぞ?それをさ」
「あ・・」
ダンが低い声で言うと、カンジとリンは黙った。勿論集中力を散漫にしている訳では無かったが・・。
ただ、内心シンもダンも2人の考えにはそう大きく自分達の見解も遠く無い事を知っていたのである。アマンが、
「かなりの部分で、動くもの・・生物的範疇で言うと、これは活動をしている。しかし、脳内波形と言うか、この対象自身が活動するにあたり、自己の脳内において指令電波を発生していないように思えます。なら、ロボットなのか・・或いは完全にコントロール下におかれた・・例えばバーチャル活動おける機器類なのかと言えば、それも当てはまらないように思えます」
「すげえ形容だな・・論理的にそれは不明だって証明している言葉じゃん」
ランが突っ込んだ。流石のアマンも少しはにかんだ顔で、答えた。




