第17章 接近する
あの会話で何が話し合われたのか・・そして、リンはしばらくの静養を経て、シン直属として今はM国首班部に居た。
そのリンだが、回復後シン・ダン・アマンにだけ驚くべき事を話したのだった。一連の会議が何故あのような形で進行したのかは、確かに雑談形式の流れであったにせよ、リンに対して何等かの刺激を与える、心がそこあらず恐らくその起きた出来事を整理できずに居るリンを、現実に戻す事。そして、それはマコトにも、会議が隊長を責める方向に行く事も告げてあったと言う。それは、やはり計算されたものでは無かったものの、あそこまで責められれば、リンが何等かの反応を示すのでは無いかと、シンとダンが、かなりマコトを責めるように会議を誘導していたのだった。彼らは・・本当に、その脳内活性と言うか、誰もが持ち得ぬ感覚を駆使し、事前にそう言う役割も任じていたから恐れ入る。アマンは即座にそれを見破ったのである。と・なると彼女の慧眼も恐るべしと言うべきか・・
だが、真にやはり超感覚を持っていたのは、リンだった。
「確かに存在は確認された。とても動きが早く、それが蝙蝠群を実際指揮した正体だと言うんだな?しかし、もし人間であるならば全く心を持たないと?」
ダンが聞く。
「ああ・・全く感じなかった。少なくても俺がオオコウモリとコンタクトが取れるって言う部分においては、知能の高さも加味されるんだろうが、その反応する部分を感じている。全く感じなかった」
「だが・・何度も確認しているが、その存在は確かなんだな?」
「ああ・・確かだ。それだけは断言出来る」
「副首班・・そこはもう何度も検討している。そして、隊長にも動いて貰っているんだからな。その上で、具体策を今から話し合うんじゃ無いか」
シンが言うと、
「勿論、その上で主査も一緒にここで最終的な策を練る会議だ。分かっているさ」
「それでは・・部長がショウがやってくれた相当細かいドット数まで修正してくれたものを、一端画像を100倍に拡大し、そのドットを更に一個、一個埋める形で再現したのが、等身大のこの人?ロボットと思われる尾が生えた対象です」
対象と言うのは、生体とロボットとも言えない、鉛灰色の全身に、赤く光る眼、そして異常に長い両腕。そして胴体比としてその半分しか無い短い脚であった。そして、これは時速150キロは出るだろう蝙蝠の速度より素早く移動している点だ。マコトやリン程の動体視力の持ち主でも、一瞬も止まらぬ複雑な前後・左右に動くその様は、通常の生体では運動力学・筋肉がもし発達していても不可解なものだった。その分析もここまで何度もやって来たし、リンの発した超音波らしき音源の解析もやっているが、やはりそのリンの許容音域を超えていたのだ。そして、超音波と言う表現で落ち着けば、そうなるだろうと。ここも曖昧なものになっていた。その上で、マコトにGOサインが出ているのだ。防御は確かにしているものの、不安がつきまとう。そこで、もしもの時にはランにはレーザー銃が渡されている。それ程の動きをする対象には、幾ら凄腕のスナイパーであるランでも無理だ。人の手では不可能だろう、乱射する事はこの狭窄な空間内ではNGだ。だから自動発射出来るように準備をした。ただ、こうなれば、最後の手段はどんな対象かも見極めない内に、殲滅と言う強硬手段になると言う事だ。




