第16章 危ない！
「そう・・そうだよな。そうだったんだよ、なら、以前水素をこのＭ国地下空間では消費されていると言う部分が、ずっと気にかかっていた」
「なるほど・・そこの『あ！』なんですか」
シンがにやりとした。
「結局さ、明確な答えと言うか、そんなものは未だに出ていない、だからずっと探索途中なんだが、今回もとにかく蝙蝠群が襲って来た。こちらがもしやの時に用意していたと言うか、そもそもはリンのホーミーでは届かない距離に居るオオコウモリ群に、伝達する為に作ったものだからな、拡声器は」
「ええ・・勿論、蝙蝠群が現れるなんて、今まで想定外でした。見かけもしませんでしたからね」
「だろう？これだけ小型ＭＲが飛びまわっていて、入れないような小空間にも進入しながらも、突如現れたんだ。蜂もそうだったよな」
「その関連性が、鉱物的防御壁のような要塞化した、この地だと思っている訳っすよ」
ダンが言うと、メイ博士が、
「だとして・・その鉱物的組成と言うのはカンジ班長、貴方の知り得る範囲において、人工的干渉を受けて細胞分裂のように生成すると考えて良いのかしら？」
「まあ・・そう言う事になるけどさ・・むしろ副首班の方が詳しいのでは？」
「おっとと・・カンジ、そもそもこの話のネタ元はお前じゃ無かったのか？」
「あ・・いや、それでもレーザー武器の事を良く知るのは副首班だ。つまり、俺は同じような組成的役割があると見ている。何故なら遺伝子ＭＩＸ然り、世界的潮流は既に鉱物ＭＩＸ分野で互いに競いあっていた時代だからだ。その中で先進的国家は、一発逆転を狙ったＡ国が先んじていたと思うし、その情報を得ていたのも和良司令官だからな」
「ほう・・お前は、やっぱり論理的思考においては天才の部類の者だな・・」
「何を言っている・・ここに居る全員がそうじゃ無いのかよ」
カンジが呆れたような顔をした。
「ま、そんな話は置いとこう。現在では天才だろうが、特別な才能を持っていようが、それは個人の能力を互いに褒め合う事だ。そんな序列も不要、要するに偶然にしろ、突発的にしろ瞬間的にどこに穴があり、俺達は消え去るかも知れないんだ。その現状をまず認識しておかねばならない。防御を優先する事を後退的選択であるとか、戦略的マイナス思考であるとか、そんな事は考えないで貰いたい。毎回言っているようだが、俺達の今の立場は、人類の地球上生誕から見ても、もう絶滅寸前、いや・・こんなに話をしている事すら奇跡なんだろう。それを忘れて、今どうにか駆使している科学の名残りでさえも、発展的な発明だと思わぬ方が良い。知恵を絞り生き抜く為の行動なんだと言う事さ。その中で、日本は鎖国を選択し、その痕跡が残っているだろうと思われるＭ国に、どうにか辿り着けた。これも奇跡だと思っている。先人の遺産であっても、全てが破壊された訳では無かったものが今俺達を偶然に生かしているんだ。それも、旧ドームは間一髪、まさに倒壊寸前だった。それもクリア出来たのは、やっぱり知恵さ。俺達にはそれがある。もし受容そのままに俺達が居たら、あのオオコウモリが跋扈し、野犬、猪が居る野外で人間が生き抜けただろうか・・それは否だ。だろう？何度もこうしてそれを忘れるなと言う立場にどうか立って欲しい」
