決別 12名の戦士達
ヤマイが言った。根拠が恐らくあるのだろうなとシンも思ったが、詳しくは問わなかった。
「いや、雨季と言う事に今引っ掛かったぞ。あの滝が満水になるんじゃないのか?つまりあそこから先に行けなくなる」
「そうだな・・じゃあ、もっと先に急がなきゃならない。ようし、俺とヤマイはここに残る、エライ班長、お願い出来ますか?」
「あ・・おう、分かった。もっと先をまず探索しておかなきゃ、次の戦略が講じられないからな」
エライ班長は7名を連れて、先の2人に渡す為に、持てるだけのランプ資材を持って探索に行くのであった。又、エライ班長発案で糸電話を通路に所々に設置し、又伝達出来るような*鳴子の竹も、所々に置いていた。その音が100M間隔で、ここまで設置されていたのだ。もし、危険があれば後続、或いは先人に伝える為であった。これも大昔の戦国時代のようなものだが、彼らは自分達で考え出したのである。
後発が音を出すと、小滝を超えて1キロ進んだ所で、かんかんと音がした。そして慌ててシリマツとリンが戻って来た。何かあったのかと引き返したのだ。
*竹は、シンが野外に出た時から自然に限られた場所ではあるが生えていた。ただし、少ない繁殖だった。旧日本には、無尽蔵とも言える程自然に生えていた植物だった筈だ。それは、恐らくこの大地が痩せた土地だった事と、100年前の電磁パルス爆裂に遡らねば分からないが・・
エライ班長が自分の考えを説明すると、
「そうですか。びっくりしました。でも、その案は頷けます。今の小滝も雨季になると、ここから先は通れなくなる可能性が大きいですからね。それに、ひょっとしたら、この通路が水路かも知れませんし・・」
「おい・・危ない事を言っているな、じゃあ、ここは水路なのか?」
エライ班長が眼を剥いた。
「いえ、可能性の話をしているだけです。水路なら、我々が一刻も早く水が流れて来る方向、つまり上流を突きとめねばなりません。諸君、少し急ぎ足で探索をやろう!」
今の状況下においては、その判断は間違いとか間違っていないとかでは無い、即断する実行力も必要なのである。これが実践と言うやつだ。シリマツ官吏は優れた判断力を発揮し出したのであった。
更に小滝から5キロ程進んだ時、大きな広場に出た。
「おおっつ!ここは・・外からの光も射している」
地下通路は、10メートル下は殆ど水平だった。つまり、考えられるとしたら水路だが、もう少し想定して見ると、偽山切りの木の直下に水が満たされても、蓋がある以上、それ以上上がって来る事は無い筈だ。むしろ、可能性としては低いのでは無いか。それは、検証をして初めてそれが違う事を確認出来る種の分析だった。この広い場所が、まだ何かは分からない。偽山切りの木から丁度8キロ地点であった。普通に歩いて2時間だ。薄明かりの歩みでは3時間はゆうに掛かるだろう。急いで、残り4人を呼びに戻る事にした。ここなら灯りが無くても、調査が出来そうだ。とにかくこの広場から、幾つもの通路が又伸びていて、ここを探索せねば、どう言う場所かも分からない。
マコト副長とケンが、持てるだけの食糧とランプ等を持ち、4人が3時間ちょっと掛けて大広場に到着した。