第16章 危ない!
「では・・今から私も今回の説明をしないとなりません。MRに至るまで、無重力空間である宇宙では、宇宙線や放射線等、或いは強い磁力線など素材にとって過酷なものは御座いますし、それまでのロケット方式では、重力と引力の関係において、大気圏突入の際には高い熱量の影響があります。故に宇宙エレベータ等の発想は20世紀にもありました。もうその辺の事も割愛しますが、一気に和良式無線光ケーブル網は、即ち全地球上、宇宙空間も含めて、その網目状の網羅によって、今までの諜報活動、武力至上主義の世界観を一変させた画期的なものでした。だが、それは和良司令官がいきなり開発したのでは無く、日本政府の極く一部の特命部署が開発して来たものだと言う事も、既に分かったので。これも説明を割愛致します。その流れの中で、この宇宙エレベータ方式の活用は、私の発想では無いと言う事です。あたかも私が、そこへ発想を飛ばしたのではなく、もしそんなMR方式が無秩序の宇宙戦略を貫く世界情勢の中で登場しては、大混乱を招くでしょうし、A国のレーザー砲が間違いなく、日本に直撃したでしょう」
「むう・・」
ケンシンの言わんとする事を、やっとここでシンとダンは理解した。マコトは一言も発せず、口を真一文字にして宙を見つめていた。
「そこが、どんな開発であろうとも、また例外も生じるのは、この、無敵の無線光ケーブル網においても、M国地下や、一部の磁鉄鉱、磁硫鉄鉱の厚い壁は貫通出来なかった。何故なら、そこに磁力線と言う反発係数が光子でさえも遮ると言う事が分かって来たのも、最近の事では御座いませんか?」
「確かに・・」
これにも2人は頷いた。
「それは逆に言えば、開発した日本政府の中枢も知っていたと言う事です。その特性を知れば、これは自然界にもともとあったのでは無く、恐らく人工物では無いかと言う考えに至りました。そこから、私もMRの開発に繋がったのです」
「人工物・・?つまり、M国のこの中枢部と言われる場所がレーダー、光通信網でも把握出来なかった事とMRの関連性・・それは?」
シンの眼が異様に光った。
「もう、オープンになりましたが、細胞変異の分野と、もう一つは鉱物変異の分野の2分野があったと言う事です。そして、私はこっちの一員でもあります」
「え!初耳ですよ、それは!」
「いえ・・それこそが、公にしてはならない段階で御座いました。お察し下さい。その分野にも黒川主査が担当されております。つまり、総監督のようなお立場でしたし、その発表に至る機運については、もう少しM国の仕組みが解明されてからだと思っておりましたし」
「だから、エライ首班は、鉱物分野に詳しかったのか・・」
ダンが唸る。




