決別 12名の戦士達
ヤマイの決意を軽んじるつもりは無い。しかし、自分達の立場だって、反旗を翻した格好だから、何で生きていて報告に戻らないんだ!と言う事になるだろう。立場的にはヤマイと変わらないのではその選択肢は無いかも知れないと思った。ただ、恐らく秘密の通路を通ったと思われる彼の行動には誰も言及していなかった。それは、互いに自分から言うものだ。聞かないと言う暗黙の了解がここにあった。彼らは、やはりそう言うカリキュラムを受けて、隠密指令を受けたメンバー達だ。その教育を受けて来た彼らには、そう言う芯もあった。と、言うかそう言う風に仕上げられて来たのだ。だから、今アイデンティティの確立と言うか、エライ班長やシリマツ官吏の登場によって、自立心と言う新たな方向が目覚めようとしている。このヤマイは、恐らく顕著な形だと思われる。シンは言う。
「いずれにしてもだ・・俺達が方向を決めるのにしても、もうちょっと先になるよな、この分ではまだまだ探索は続くだろうからさ、今そっちの話じゃ無い」
「ああ・・そうだな」
ヤマイは頷いた。2人は進む・・相当な距離であろう。2人は確認すると通路戻って行く。3キロ延長上に小滝があったとそれを報告すると、又代わりの者が2名1組になり、更に先を探索する事になった。
「油って・・どこまでありますか?足りなくなれば、またオオコウモリを捕まえるとか?」
シンがヤマイと冗談まじりに言った話を、真顔でエライ班長に聞いた言葉だった。シンが余り冗談を飛ばす男とは見られては居なかったので、少し皆の眼が点、シン達の代わりに今回はシリマツ官吏とリンが探索に向かって居た。外の監視小屋は、サテンとウテンだ。ここに残った9人が、次に苦笑い。
「アホ言え・・まっぴらだ。でもさ、今度は網がある。本当に鹿が入るんじゃねえのか?オオコウモリが攻撃したんじゃなく、ひょっとしたら、西に大移動をした途中だったんじゃ無いかとさえ思えて来た。いや、勿論、全部が全部が移動した訳では無い。個体は今でも確認されているしさ」
カンジの言葉に、うん?と他8人が一瞬黙った。
「おい・・それ、誰かに言ったか?」
「いや、今初めて言った」
「お前・・重大な事を今言ったぞ?」
エライ班長が、難しい顔をして考え込んでいる。シンとリンが、
「それが事実だとしたら、俺達は野外活動の攻略を見つけられるかも知れない。あの圧倒的なオオコウモリに向うなんて、絶対に無理。けど、小集団であれば、どうにか闘わずしても逃げられる手段がある。この日本では地球温暖化によって、四季は崩れ、大きく雨季と乾期があると言われている。つまり、今から雨季に突入だ。つまり雨季をオオコウモリが嫌がり、集団で移動している事になりはしないかな」
「あ・・それはあるかも」
「全員揃ったら、この地下道も、もう少し分かってくるだろう。相談しよう。どこへ続くのかは分からないが、ここは、敵が居ない一番安全な場所だし、水もある」
「水は恐らく飲めるだろうと俺は思う」