第16章 危ない!
「通常音は湿度の多い所から低い所に流れる。音弾と言うが、リンは強弱によって、オオコウモリに幾つかの言語としてそれを伝えている。つまり雨天の時には、地上に居る我々にも良く聞こえると言う事だ。晴天の時には、これを連続する事によって伝達するが、それを遠方に居るオオコウモリに伝えるように、拡声器を作った」
「それが、今回使用したものっすね?」
「ああ・・そうだ。だが、勿論の事だけど最大音を発すれば、近くの者は鼓膜が破れるよ。そこまで俺達は馬鹿げた事もしないし、伝達音に対する様々なやり方を考えた。音弾も例えば、球状では無く光のような線状に発する事も出来ないとかな・・そういう実験もしていたんだ」
「ほう・・でも、そんな必然性が?」
「確かにそう言う意味では、地下晶洞内においてだと、音もその空洞を伝わるし、反響もするので、かなりの域まで伝える事が出来る。だが、その中で、今言う領域の音源を超えて使う事は勿論想定もしていないし、武器でも無いから使う必然性も全く無かった訳だ」
「だが・・リンは何かの異変を感じて使用したと?」
「そうなんだ。リン程の男が使わざるを得なくなった蝙蝠群に対するホーミーは、実際の音弾とはその領域が違っていたと思うし、逆に蝙蝠群の発する音域においても自分の危機感もあったんだと思う。後方に控えていた俺には感じなかった部分ではあるが・・」
「つまり・・蝙蝠が発する音域は、通常の者には感じる事が出来ないにしても、リンにはそれが脅威と感じたと言う根拠の部分っすね」
「ああ・・それを確かめるべく、勿論人間には聞こえないレベルの録音もデジタル音とそして記録されているから、今分析もやっている。だが、先程から言うような後塵を舐めるような後出しじゃいけないんだよ、いや・・そんな気がするんだ。だから、そこを突っ込まれると俺は何も言えなくなるが・・」
マコトは少し目線を落とした。そこには確かに確固たるものは存在しなかった。
「ふうむ‥具体的に言えと言うのが無茶かもね」
「え・・」
ダンがシンの言葉に眼を剥いた。
「だって、今回・・何か得体の知れないが対象なるものをやっと捉えた。しかし、そのリンに対して攻撃か或いは精神的ダメージを植え付けるものであったかどうかと言う事で、メイ博士が今担当し、ここへ来ている。リンには外傷は全く無いし、命に関するその別状は無いと言うことだが、確かに精神的に衝撃を受けた可能性はあるし、むしろ高いと思われる。ただ、先程から隊長の話も聞いているが、その音弾をリン達の場合は先頭の蝙蝠に直接ぶつけたんすよね?」
「あ・・ああ。だから数頭と言うか、数十匹に関しては飛行困難な状況下に陥り、落下しているからな。やつらに第一撃を加えた事に疑問は抱かないが・・?」
「そこで群れと言うのはリーダーが左右する部分が大きいので、その攻撃に対する効果はあったと見る。その次に、統制の取れなくなった群を一気に退散させようと大音量を発したと?」




