第16章 危ない!
「ほう・・初耳だが、そう言う事は確かに現地で任せている事案でもある。つまり、攻撃用では無く、オオコウモリに対する通信用の為に?」
「うん、そうだ。敵として認識もしていない不明な存在に対して、警戒はしても攻撃対象や反撃対象として実験をする事は全く考えていない。むしろ、用心は幾らでもするがな、それが以前俺が指摘も受けたが、蛮勇、勇猛果敢=無謀なアタックだからだ」
「ふ・・あの言葉を気にしていたんすか?」
「するわ!そりゃするだろ?首班」
ダンが即座に突っ込んだ。マコトは苦笑い。シンは危険を犯して欲しくない故、そう言った事は分かっている。
「で・・実は隊長・・色んな気象条件とか結構詳しいんすよね。それに余り自分から披露したがらない奥ゆかしい性格も相まって、仲間からは確かに信頼もあるし、今までもそうだったように頼りになる兄いなんすけど、どうも話の端々には、根拠があるように感じるんすよ。そこは何すか?」
「おっと・・」
ダンが少しのけぞった。シン独自のそれは超感覚なのだ。誰にも彼の領域には恐らく達する事が出来ないものだった。何か感じるものがあると言う種の霊感にも近い。
「荒唐無稽な話では無く、自然は万化する。気象などはその一つだし、このM国の一部には灯りはあるものの、殆ど漆黒の『龍の巣』とも呼ばれる地下鍾乳洞の空間の中で、我々のような視力は必要とはしない。つまり蝙蝠もそうだし、ヤモリ、カマドウマもそうだ。僅かに生息していると思われる水棲動物もそうだ。ただ、外洋から進出して来たのだろう、鰻はこの地で独自に生きているものも居るのだろうが・・つまり、俺はM国の地形もそうだが、気象条件を調査する中で、特にリンがホーミーを使い、オオコウモリを訓練する時に同行していたので、気づいた事があるんだよ」
「ふむ・・それは?」
「ホーミーと言うが、実際リンの発する独自の音源は、振動による共鳴であり、実際の民族が歌唱等に使用した音源とは違う。超音波に近い音域を使っており、とても人間離れをしたものだ。到達距離も2キロ半に近い」
「ええ・・驚異的だとは複数の者も言っておりますよね」
シンは頷いた。
「その千変万化する自然の中では、通信路や、晶洞の中、鍾乳洞の中、ドームの中とは違い、湿度等で音域は変化する。特にこのM国においては殆ど日本でもそうではあるが、雨季、乾季の境があって、雨雲が上空に発生する季節と、乾季によって晴天の時では大きく違う。また音に狭窄した一点における直進性は無いと言ったが、発する前方に対する直進性がある。それは球状のものであり、連続する事によっていくつもの音弾を発するようなものだと俺は思う」
「ふ・・そこで?」
ダンも何か気づいた。優秀な男2人がマコトの話に少し興味を持ち出したようだ。




