第16章 危ない!
マコトもダンも首を振る。センサーだと思えば、そんな説明をいちいちする必要性も無い。この場では不要と言う訳だ。マコトが素朴な質問をするが、こんな話をする為に時間を取って居る訳では無いのだ、彼らにはやる事がいっぱいある訳だ。ダンの言葉を借りると、こんな雑談よりも、どんな事を実行するのかと言う会議をせよと言う事らしい。この場に居ないのは、本部に居るシンだけなのだから。ダンがそこに居る以上、現地の指揮権は彼にある。冷静沈着で表情も読み取れないが、少し苛立っているように見えた。そこで、シンは、
「現在も当然進行中さ、MRによる探索は365日、24時間休む事も無い。大容量のデータベースが設置された事で、勿論電力供給量の問題は多々あるが、この地において何等かの無人起動しているシステムが存在する。これは確実にあると思っている。故に、ここまで慎重に進めて来た。今回においても斜坑から晶洞を抜くと言うこれまでも隊長が確認しているように、巨大な鍾乳洞とは別に、これも巨大なペグマタイトの脈状の晶洞群がある。その一つを開けたに過ぎないが、ここは把握できていない。なぜなら、副首班が前から指摘しているような磁硫鉄鉱層なんだよな?」
「あ・・ああ。1M位の層が何層もあるらしい所までは分かっている」
「その為に、MAPが十分な機能を発揮出来ない。これこそこのM国探索の最大の難関だ」
「それは・・もう十分に分かっては居るが・・」
マコトが言おうとしたが、
「いや、まるで分かっていなかったと言う方がおかしいんすよ、実際何も分かっちゃいないって言うのを、俺達は自覚しなきゃいけなかったと言う事っす。これまで危ない場面は相当にあった。けど、俺達には少なからず今までやって来た自信があって、油断があったかも知れないと言う部分す」
「ううむ・・でもさあ」
マコトが反論しようとするが、ダンが止めた。
「良いんす、その先は。でも、やっぱり進まなきゃならないんすよ。ここは」
「あ・ああ」
シンは黙っていた。この場合、ダンの方が説得力もあるし、ポーカーフェイスでスパッと言う部分があるので、マコトも何も言わなかった。シンがここで、
「今日、会議をしている事は、これから先を決める話にしたいと思う。補佐や室長も交えて話を勿論するが、その前に今隊長からも報告があったように現状分析が必要だ。これは、どんなに時間が掛かっても、慎重にやらねばならない。その上で恐らくリンの身に起きた事を回復を待って何があったのかも知る必要がある」
「むう・・しかし、リンの今の様子では」
「メイ博士は時間は掛かるが恐らく回復すると言ってくれている。俺達にとっても超優秀な第14班の実働のエースに起きた身の異変に、少なからず動揺もしているし、この件は組織内にも伝わっているだろう。その沈静化も必要だ。熱くならずに冷静な分析も必要だ」
少し動揺し、高揚していたマコトの表情が変わった。シンとダンは今にも飛び出しそうな気配を見せていた彼に、恐らくこんな話をして気持ちを落ち着かせようとしていたのだろう。




