決別 12名の戦士達
どれだけ進んだだろうか、設置が進み、松明の明かりで進むこの日は、シンの耳に滝のような音が聞こえた。かなり先のようだ。同行しているのが、この日はヤマイだった。
「音が微かに聞こえて来る」
シンが言う。
「松明の火が持つかな・・」
「なあに、油のランプを利用すれば良い。今日はまだ10個持っている。何とかなるさ。帰りが心配なら、ここで設置した場所に一個火を灯そう」
「そうするか・・ここまで来たのなら」
通路は非常に長く、2キロは確実に進んでいた。10M間隔で灯り壺を設置して来たから、200個設置した事になる。材料はまだまだあるし、オオコウモリの油は日をおくと粘着質になり、相当長時間燃える事も分かっている。大発見であった。これだけでも今の時代に有効な動物なのだ。勿論倒して、利用すればの話だが・・それも命がけだよねと、シンとヤマイは笑いながら進んだ。
「この灯りだけでも2時間は持つし、結構明るい。音の感じからすると、作業をしながらの行程だったから、30分もすると音の場所まで行けるんじゃないかな」
シンが言う。
「ううむ・・でもさ、これが大きな空洞なのだとしたら、滝の音なら反響して大きな音に聞こえる筈だが、意外に遠かったりするのかも知れないぞ?」
「その時はその時さ。火種もあるし、10個灯りランプも持っている。少なくても一昼夜位なら大丈夫な計算さ」
「おい、帰らないつもりか?交代でやっている作業だから、心配して誰かが来るぞ、そんなに長く探索したらさ」
「そうだな・・じゃあ、30分だけ歩かせてくれよ。ここまで来たら見たいじゃないか」
「ふ・・分かった。俺もそんな気分さ」
2人は、また笑いながら進んだ。今の所全く危険性は感じ無かった。頑丈で崩れる心配も無さそうな通路であった。何時の時代かは分からぬが、少なくても100年以上誰も通っていないのは確かだろう。
シンの耳か感覚なのか、本当に30分程歩くと、小さな滝が眼前に見えた。この通路を横切るように、真っ直下に落ちているようだ。
「やっぱり滝だったな、シンの言う通りだった」
ヤマイが感心したように言った。
「音が静かだったのは、この通路を横切る真下に流れているからだ。恐らくこの道は、滝の途中の場所なんだろうな、かなり滝壺は下のようだ。この水・飲めるかもな」
「発見だろうな、もし飲める水なら、俺達は生きるべき手段を殆ど見つけちまったって事になる」
「ふ・・このまま野外活動を選択すればの話だな」
「ん?だって戻るつもりは無いんだろうが?」
「今は無い。しかし、何があるかは、調べてからだ。絶対戻らないって決めている訳でも無いんだぜ?」
「へ?そうなのか、でも、俺は組織を裏切って来た・・」